京の花街「輪違屋」物語

「一見さんお断わり」、または「観覧謝絶」

京都の座敷や廓にはそういった断りが点在する。簡単に言えばぷらっと独りで立ち寄ることができない。馴染み客(常連客)の紹介がなければ初めて愉しむことのできない格式の高い所である。現在でいえば「会員制」と言う所と似ている。

本書は京都の中で最も古い「廓屋」で知られる「輪違屋(わちがいや)」の跡取り奮闘記についてについて書かれている。

「輪違屋」が始まったのは1688年、その時は置屋としてであった。現在の形になったのは明治5年になってからのことであり、太夫教育の場でありながら、宴席の場の役割も担っている。昭和59年には京都府の文化財にも指定された京都を代表する花街として有名である。

本書の著者はその「輪違屋」の十代目であり、幼い頃から太夫ら、廓の人々にふれあってきた中での回想、「輪違屋」の歴史、京都の伝統など余す所なく記されている。京都の敷居の高さと奥ゆかしさ、そして「華」を感じることのできる一冊と言える。