新説 東洲斎写楽 浮世絵師の遊戯

「浮世絵」の絵師の中では特に有名な東洲斎写楽(とうしゅうさい しゃらく)。しかし彼が浮世絵師として活躍したのは1794年~1795年のうちわずか10ヶ月ほどである。たった10ヶ月の中で何十枚と残し、忽然と姿を消した。もっとも写楽の生没年も不詳であり、没年こそは諸説あれど確証自体がまだない状況。生年に至っては史料もないような状況にある。

10ヶ月あまりの中で鮮烈な活躍を見せた写楽だが、先述の様に生没年も謎であるが、正体は一体誰なのかもわからない状態にある。有名な論考では斎藤十郎兵衛の説が有力であるが、こちらもまだ「有力な説」から脱していない事実がある。

そこで本書は小説ではあれど謎の多い写楽の生涯はもちろんのこと、浮世絵の謎に至るまで「新説」と言う形で、時にはユーモア溢れる説をエンターテインメントとして描いている。本当にその「説」が正しいかどうかは別にしても、写楽の「謎」を面白おかしく楽しめる一冊に仕上がっている。