突然だが、もし「ラベルのない缶詰」があったら、あなたは入っている中身について何を連想するだろうか。
ごく普通にあるものというと、コンビーフや焼き鳥、野菜、スープ、煮魚…など挙げてみると枚挙にいとまがないほどである。しかし本書に出てくる缶詰はそういった類が中に入っていない。「いったい何が入っているのだろう」という不思議な好奇心が私のなかにかき立てられてしまう。
本書はその「缶詰」を巡る物語である。通常であれば「缶詰」をあければそこで終わってしまうのだが、それまでのプロセスが、いかにも奇妙であり、かつ不思議なものである。本書の表紙にあるようなかわいさはほとんど無く、むしろおどろおどろしいものであるのだが、「怖い」という感情はほとんど無かった。むしろ「何が入っているのか?」という感情が常に優先してしまうからである。
しかも本書にてでてくる缶詰は一つではない。あけられたら次にまたラベルのない謎の缶詰がでてくる。しかも中身はすべて異なるのだから「次は何だろう」という好奇心をくすぐる。で、それを読んでいる自分もそのような体験してしまう、いわゆる「デジャヴ」な感覚に陥ってしまう。本書もラベルのない缶詰と同じように何がでてくるかわからない。そんな一冊である。
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