1941年と言えば、12月8日に日本が真珠湾へ攻撃を行い大東亜戦争が開始された年であった。当時から日米関係が緊張状態にあり、いつ戦争が起こってもおかしくないような状況に陥っていた。
日本では政府による英米文化そのものを楽しむこと自体御法度とされ、米国では日系人に対する強制収容も行われた。
本書の著者は2001年からアメリカに在住し、日系アメリカ人社会と出会った。その出会いから第二次世界大戦から始まる日系アメリカ人の歴史を記録し、「日系史記録映画三部作」として「東洋宮武が覗いた時代(2008)」、及び「442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍(2010)」と映画化した。そして三部作としての最後の作品として「二つの祖国で 日系陸軍情報部」が2012年12月に公開される。本書はその日系アメリカ人社会の歴史の記録を一冊の本に綴られている。
第1章「東洋宮武と強制収容所」
東洋宮武(宮武東洋)は1895年に香川県で生まれるが、わずか14歳でアメリカに移住することとなる。その後写真にのめり込み、オリンピックの写真撮影も行った。しかし東洋宮武の作品で代表される物が日系アメリカ人と強制収容所の写真であり、それが最初に書いた映画だけではなく、「東洋おじさんのカメラ」として絵本化された。
第2章「日系社会からの反響」
日系アメリカ人は、いうまでもなく日本人とアメリカ人とあわせ持っているため、両方の文化を知る人物である。それ故にアメリカ文化と日本文化の媒介人をつとめることもしばしばある。
第3章「442連隊の大和魂」
最初にも書いたように、2010年に映画化された「442日系部隊」の撮影エピソードとその「連隊」のあらましについて綴っている。
第4章「わが妻「榊原るみ」さん」
著者の妻である榊原るみのことを綴っている。
榊原るみと著者が結婚したのは2001の1月であり、まもなく夫とともにアメリカに移住し、映画プロデュースを手伝っている。それまでは清純は女優として「男はつらいよ」「帰ってきたウルトラマン」などにも出演した。
第5章「交通事故とアメリカの医療制度」
交通事故は2010年9月にラスベガス近くで起こった。自分の運転する車がガードレールに衝突し横転。著者は瀕死の重傷を負ってしまった。
奇跡的に一命を取り留めたが今度は医療保険と訴訟の壁が立ちはだかっていた。
第6章「MISと帰米」
「MIS(Military Intelligence Service:アメリカ陸軍情報部)」は主に「日系二世」を中心に構成された情報隊員の集団である。主にスパイや護衛と言った役割が中心であったが、日本軍・米軍の両方で活躍した兵士もおり、かつGHQとも関わりを持っていた人も少なくなかったという。ちなみに最初に書いたように、今年12月に公開される映画はこのMISが中心である。
第7章「帰国」
第5章にて綴った交通事故、そして高額な医療保険がきっかけとなり2001年より11年間住み続けてきたアメリカを去り、日本に帰国した。その中でこれまで見えてこなかった日本とアメリカ、本書はそのことを綴っている。
第二次世界大戦の歴史の中であまり知られていない「日系人」の歴史、その史実とジレンマを三部作にして映し出した功績は大きい。そして来る12月はこの三部作の最後に当たる。日本とアメリカの架け橋としての日系人がどのような歴史を辿っていったのか、その生の声が伝わる一冊と言える。
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