チョコレートの世界史―近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石

2月14日はバレンタインデーである。
その当日まではお菓子屋やデパート、ショッピングモールなどではいろいろなチョコレートが販売され、本命・義理関わらず、大盛況である。ちなみに私は独り身であるので、自分でチョコを買って食べるというくらいである(もちろん仕事上のティーブレイクとして)。
それはさておき、バレンタインデーは本来「269年にローマ皇帝の迫害下で殉教した聖ウァレンティヌス(テルニのバレンタイン)に由来する記念日(Wikipediaより)」という日なのだが、流通業界・製菓業界の戦略によってチョコレートを贈るといった風習が1970年代後半にできた。
そもそも「チョコレート」はどのような歴史を紡いできたのか、ちょうどバレンタインデーでチョコの消費量も多いことなので、その歴史について、本書を通じて紐解いてみようと思う。

1章「カカオ・ロードの拡大」
言うまでもないのだが、チョコレートの原料の一つに「カカオ豆」が挙げられ宇rのだが、「カカオ豆」が使われ始めたのは紀元前11世紀に起こった「オルメカ文明」の頃だった。それからメキシコ地方からエジプト・スペインへと渡り、中世ヨーロッパでは貨幣として扱われた。そのカカオはヨーロッパによって、アフリカの奴隷が南北アメリカに送られ、カカオ生産のために働かされるという時代もあった。

2章「すてきな飲み物ココア」
チョコレートが作られる前に、カカオ豆が使われる用途があった。子供から大人までよく飲まれる「ココア」である。ココアは16~17世紀のスペインでカカオ豆と砂糖を加えた飲み物として飲まれた事が始まりと言われている。そのココアは当時食品と言うより、「薬品」としての側面があったのだが、ココアを巡っては宗教的に、医学的に論争の的にもなった。

3章「チョコレートの誕生」
ここでいよいよチョコレートが出てくる。チョコレートが生まれたのは1730年にイギリス人が固形のココアをかじった事から始まる。当時はココアを作る時間が無かった人のために、固まりにして食べたのだが、やがて固形のチョコレートになったのは約100年経った後の事である。

4章「イギリスのココア・ネットワーク」
イギリスにおけるココアが広がりを見せたのは19世紀、そのときにはココアの製造業も産業革新になり、生産も飛躍的に伸ばし、庶民の間でも愛されるようになった。さらに広告も出てくるようになった。

5章「理想のチョコレート工場」
チョコレートが生まれてから、チョコレート工場ができあがって、ココアと同じく広がりを見せた。本章ではチョコレート工場がいかにして広がり、労働人口増加に貢献をしていったのかを取り上げている。

6章「戦争とチョコレート」
時代は明治維新になり、日本でもチョコレートが食されるようになったのだが、1920年代には、日本でもチョコレート製造が始まった。森永製菓の「玉チョコ」が始まりとなり、やがて板チョコになるようになったのだが、そのときは「居眠り防止食」として扱われた。
時代は第二次世界大戦に移っていったのだが、兵士食としてのチョコレートも誕生した。その一つには今も有名な「キットカット」が挙げられる。

7章「チョコレートのグローバル・マーケット」
第二次世界大戦が終わり、冷戦の時代に入ってきたときには、軽食としておやつとして食べられるチョコレートも誕生し、チョコレートのヴァリエーションにも広がりを見せ、さらには全世界で流通し、グローバル・マーケットとなっていった。

日本におけるバレンタインデーでは、チョコレートを渡す風習があったのだが、それが日本における1年間のチョコレート消費量の2割にも上っているという統計がある。しかしチョコレートそのものの歴史をひもといてみると、カカオ豆のようにほろ苦くもあり、深い歴史もある。本書はチョコレートの深さを知るきっかけになる一冊である。