“快楽消費”する社会―消費者が求めているものはなにか

日本における消費行動は年々変化している。かつては「生きていくために」消費していったのだが、やがて「モノの豊かさ」を意識しての消費に動き、そして本書にある「快楽」を求めるための消費に走る。その消費行動には一体どのような行動・心理があり、歴史があるのか、本書はそのことについて考察を行っている。

1章「消費者の行動をさぐる」

本書はマーケティングの本では無く、あくまで消費指向について考察を行っている。そのためまずは「消費者行動」と呼ばれるものの定義から始まっている。消費者行動は簡単に言えば消費者が商品を買うまでのことを想像してしまう。実際に「消費者行動」と言う言葉は本書だけではなく、新聞や公的な調査報告書に使われており、消費の傾向を探るために使われる事が多い。

2章「快楽消費のロジック」

そもそも「快楽消費」とは何か、から始まる前に「快楽」とは何かについて知る必要がある。「快楽」を辞書で引いてみると、

きもちよく楽しいこと。特に、欲望が満たされた心地よさにいう「広辞苑 第六版」より

とある。つまり「自分へのご褒美」や「満足」を得るために「消費」を行う事を「快楽消費」と定義づけられる。しかしこの「快楽」は一時しのぎのものもあれば、数年は持続させられる長期的なものもあるのだが、これについては心理学の範疇にあるため、ここでは割愛となる。

3章「日本における快楽消費の歴史―高度経済成長期以降」

では、日本における「快楽消費」はどのような歴史を辿っていったのか、その一つのヒントとして「高度経済成長期」が挙げられる。高度経済成長期では家電製品が数多く開発され、また家庭娯楽用品もできはじめた。そのことから生活のバロメーターが向上しただけでは無く、余暇活動を楽しむ「快楽」がかなうようになった事から「快楽消費」が始まったと言われている。

4章「今どきの快楽消費―全体的な傾向は?」

現在において「快楽消費」と呼ばれるものはいったい何なのか、その一つとしてリラックスや和みといった「癒し」による消費、さらには、空想世界で、日常生活では得ることのできない「快楽」を得ると言うことも、現代における「快楽消費」としてある。他にも「自分へのご褒美」という名のもとにカフェやスイーツといったものも販売されており、「ご褒美」を味わう満足感を得る「快楽」もこの、現代における「快楽消費」に含まれる。

5章「今どきの快楽消費―個別トピックス篇」

では、「個別」として見た場合、そのような「快楽消費」があるのだろうか。本章では「高齢者」「低所得者」などに焦点を当てている。

高齢者の消費となると囲碁や社交ダンスと言った生涯学習・生涯スポーツなどがあれば、最近ではパソコンやビデオゲームの講座を受けると言う傾向にあると言う。

一方で低所得者の場合は快楽や満足のために消費を捻出することは難しくなる一方で、食事を少し贅沢にするなど、やりくりしながら「快楽消費」を行っているという。

6章「明日へとつづく快楽消費」

もちろん「快楽消費」ばかりでは、日々の生活を満足できるわけではない。もっと言うとそればかり続けていると、資金が底を突く。そのため本章では「賢い消費者」になるためには、どうしたら良いのか、その理想像について取り上げている。

今の消費傾向は生活のためでもあるが、もう一つとして「快楽」と言うのがキーワードになってくる。もちろん日本人の財布の紐が、景気が良くなろうが悪くなろうが固くなる傾向にあるのだが、その紐を柔らかくするために一時の「快楽」が大きく関わってくる。その傾向を知る必要があるのではないか、と考えさせられる一冊だった。