たらふくつるてん

昨今では様々な雑誌で落語が取り上げられ、どこかのホールや寄席では毎日のように落語のイベントが行われている。その落語の世界にも「祖」が存在する。

関西を中心とした「上方」であれば露の五郎兵衛(つゆの ごろべえ)であれば、江戸は鹿野武左衛門(しかの ぶざえもん)である。そこから初代三笑亭可楽が出てきて江戸落語のルーツが生まれ、育っていった。

しかしその鹿野武左衛門は江戸落語を生み出した人物であると同時に波乱万丈の人生を歩んでいった。その発端となったのがコレラの流行の元凶となり、そのことで大島へ島流しの刑に処されたことにある。本書でも顛末と流刑後のことについても詳しく取り上げられており、それでも芸を磨く姿が映し出されている。そのことを考えると数年前に取り上げた瀬戸内寂聴氏の「秘花」にも通ずるものがある。