鳥獣害――動物たちと、どう向きあうか

最近に限った話ではないのだが、生活の中で鳥獣害を被ると言ったことが少なからずある。有名どころでは農産物を食い荒らしたり、人を襲ったり、電車遅延を発生したりするなどが起こっている。鳥獣害となると人間と動物との共生はどうなっているのか疑問に思ってしまう。鳥獣害を避け、真の共生をするための対策はどのように行ったら良いのか、本書ではそのことを取り上げている。

第1章「「田園回」のなかの鳥獣たち―害獣化する野生」
都市部に鳥獣たちが、いるような姿は私の住む鎌倉にも見かけることがある。都市によってはタヌキやサルといったものもいれば、都市によってはクマやシカなどもいるといった話もニュースで聞く。

第2章「街なかを闊歩する野生鳥獣」
街中で闊歩するだけであれば別に街はないのだが、その街中で人を襲うと行った事件も存在する。場所によってはクマやイノシシが街中に現れて、人を襲い、ケースによっては死者まで出るようなことさえもある。

第3章「農村に跳梁する野生」
被害は人的だけに及ばない。農産物の被害もある。農村の中では農産物が食い荒らされたり、糞害にあって台無しになったりする事もニュースなどで取り上げられることが多い。

第4章「鳥獣との闘いと苦悩―全国初の捕獲補助金交付の町」
その獣害と闘うために島根県瑞穂町(現:邑南町)では鳥獣害の対策として「捕獲補助金」を制定し、交付するに至ったという。その交付により地域活性化につなげようとするのがもくろみとしてあったのだが、被害額が減少したことからある程度の成果はあったという。

第5章「人と動物の共存への模索―各地域での実践」
人と鳥獣との共生は今もなお様々な試みが行われているのだが、本章では岐阜県・滋賀県・北海道の地域において動物の鳥獣街の現状と対策を取り上げている。

第6章「人は動物たちと、どう向きあってきたか」
動物の考え方は日本や西欧とは大きく異なる。後者の場合は人間が上にあり、動物は下に位置していることから乱獲をすると言ったことを是とする風潮にあった。前者は同じ対等の立場にあるため共生をすることを是としている。

第7章「庶民の食の変容と動物たち」
狩りをすることによって食が生まれるのだが、日本では多くの動物を神聖視することで肉とすることを避けてきた。その神聖視を避けるためにウサギの数え方を「匹」ではなく「羽」とし、取りとして扱うことによりウサギ肉として捕獲できるようにしたのは有名な話である。

第8章「新たな動物観への展望」
最近では鳥獣害の対策として捕獲するのみならず、ジビエとして肉食利用をするような動きもある。実際にどのような試みなのかも含めてモデルケースもあわせて紹介している。

第9章「人と動物、共存の場所―形成均衡の世界へ」
共生をすることが日本としての大きな是となるのだが、鳥獣害の問題が起こっている以上、解決までの道は長く、険しい。その中で概念的にどう行えば良いのか、そしてそれを行動としてどう形にして行くのか課題は山積している。

鳥獣害は私たちの生活にも身近なものとしてある。しかし動物を愛護することと矛盾しているのではと言う考えから解決までいくつもの課題がある。地域によっては様々な対策が講じられているのだが、それが他の地域やさらに大きな自治体・国といった所でどう解決する道があるのか、それは定かでは無い。