テノヒラ幕府株式会社

何とも奇妙な会社名であるのだが、中身もまた「奇妙」である。その会社は簡単に言うとスマホゲームの開発会社であるのだが、会社で働く人びとは文字通りの「十人十色」といった印象が非常に強くあると言っても過言ではない。会社の、そして文字通りの「テノヒラ」の中でどのような開発を行い、人間関係が作られていくのか、架空でありながらも、痛快に描かれている節が強くある。

スマホゲーム開発の現場はシステム開発の中でもけっこう厳しい部類に入るのだが、その「厳しい」側面もありありと描かれている。「弱小」であるが故の運転資金や開発費などの話、さらにはシステム業界ならではの話に至るまで良くも悪くもさらけ出している。

端から見れば「地獄」と連想しそうな会社であるのだが、意外にも会社で働く人々は悲哀に満ちている様子は少なく、むしろ衝突しながらも「楽しく」仕事をしている印象がある。もちろん悲哀もちらほらとあるのだが、弱小ながらも戦い続けている姿がここにあった。