新貿易立国論

もっとも島国である日本では、資源などがほとんどなく、輸入でまかなうことが多くあった。その代わりに技術やノウハウ、さらには日本独自の製品を輸出するといった「貿易」を盛んに行い、一時期世界第2位の経済大国にまで押し上げたことがある。そのことから日本は「貿易立国」と呼ばれたのだが、それも過去の話になりつつある。それは中国といったBRICs、さらには途上国の隆盛もあり、その地位が揺らいでいる。貿易立国の復活に向けて日本はどのような姿勢を持つべきなのか、本書はそのことについて提言を行っている。

第1章「変わる日本の立ち位置」
日本の立ち位置は明らかに変わった。貿易立国になるまでの道は大東亜戦争敗戦の焼け野原からスタートし、経済にて攻めに転じることが中心だったために、次々と製品を開発しては輸出を積極的に行ったことにより成長したものの、その反面「貿易摩擦」が生じ「ジャパンバッシング」が起こったこともまた一つの要因として挙げられる。

第2章「新興国・途上国の台頭」
貿易立国となった日本だが、その成長にも陰りが生じた。それは新興国や途上国の発展により、貿易が世界的にも広がりを見せたことにある。そのことで日本として貿易大国の立場が危ぶまれ始めた。

第3章「「アジアと日本」から「アジアのなかの日本」へ」
アジアの中でリーダーとして発揮した日本はそのリーダーから引きずり下ろされた事実がある。それは中国の台頭である。今となっては中国が日本に変わり、トップに立ったこと、そしてそれがアジア以外の諸国でも認知されたことによる。

第4章「ASEANから新興国・途上国を開拓する―メイド・イン・ジャパン戦略」
新興国や途上国の市場が急拡大していったことから、先進国の立場も揺らいでいくこととなった。しかしながらその国々に対してのチャンスもあり、日本市場を開くことが先決になってくるのだが、ここ最近は中国市場が諸外国に開かれ始めた事実があり、遅れを取っている。

第5章「新興国・途上国とともに成長する」
日本としての成長をするきっかけとして、日本独自で頑張ることが高度経済成長期であったが、時代は変わり、限界を生じた。その限界を突破するために日本ならではの「共生」がある。共生をすることによって日本と諸外国と共に成長をするきっかけが生まれる。その方法としては技術提供ばかりではなく人材支援などがある。

第6章「日本から富裕層マーケットに切り込む―メイド・イン・ジャパン戦略」
メイド・イン・ジャパンの製品は海外から見ても評価が高い。その証拠として製品にしても、農産物にしても海外で売られているだけでなく、特に後者の場合はアジアのセレブを中心に人気があるという話を聞いたことがある。そのことを中心にした戦略をマクロの単位で行っていく必要があると著者は主張している。

第7章「日本の競争力をいかに高めるか」
日本の競争力が落ちて久しいのだが、落ちてから復活するまでに何が必要なのか、未だに見えていない状況にある。その状況からいかに脱していくかを提言しているのが本章である。

日本は独自の技術やノウハウ、さらにはコンテンツを持っているといっても過言ではない。それらをいかにして海外に売り込んでいくか、そのマーケティング能力はさることながら、新興国にも働きかけるといった交渉力があるかというと、首を傾げてしまう。新しい貿易立国にするためには、日本として、そして日本人として変わっていく必要がある。その「変わる」参考資料となるのが本書と言える。

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