声優 声の職人

元々声優の仕事の歴史は、日本において大正時代末期にまで遡る。東京放送局(現:NHK)がサイレント映画に声を吹き込んだことが始まりとされており、その当時は俳優の仕事の一部として声の入れ込みとして俳優の副産物としての仕事の役割でしかなかった。もっとも声優の大御所の中には俳優をメインにしていたが、いつしか声優として成功した方々がほとんどで俳優の仕事の一つとしての役割としか認識がなかった。

しかしながら声優が専業化されていった。いつの頃からといった具体的な時期は分からないがおそらく80~90年代の頃かもしれない。その時にはアニメや吹き替え、さらにはナレーションなど声の仕事として多岐にわたり始め、さらには声優学校まで作られたほどである。その声優学校というとかつては勝田久が開校した「勝田声優学院」があり、多くの声優が輩出された。本書の著者である森川智之氏もその1人である(第5期・同期には横山智佐、高木渉らがいる)。その著者は声優の仕事とは何か、そしてこれから声優として仕事を希望する人びとに対してのメッセージ、さらにはこれから声優として何を目指していくのかを綴っているのが本書である。

第1章「声優という職業」
今となってはアフレコなどの声の吹き込みを行うことが主体である一方で、タレントやアイドルなどのようにライブをしたり、テレビ出演をしたりするような声優も多くなっていった。そのことから声優は大人気の職業として知られるようになった。では著者自身の声優の仕事はどうなのかを取り上げている。ちなみに著者は声優の仕事だけでなく、「アクセルワン」という声優事務所の代表取締役も勤めている。いわゆる「プレイング・マネージャー」の役割を担っている。

第2章「声の職人―帝王の履歴書から」
著者の相性の一つとして「帝王」がある。なぜ「帝王」と呼ばれるようになったのかというと、著者はBL作品に多数出演しており、数としても質としても抜きん出ていることから「BL界の帝王」と呼ばれ、そこから略され「帝王」と言われたという。
その著者はかねてから声優を志したわけではなく、体育教師やスポーツキャスターを目指していた。しかし体育教師はケガによる挫折があり断念。その後アナウンスの道に進むかと思いきや声優の仕事を見つけ、進むこととなった。そこから冒頭でも書いたように勝田声優学院に進み、声優の道を歩んでいった。そのエピソードも赤裸々に明かしている。

第3章「裏方が表舞台に出る時代」
冒頭でも書いたように声優はかつて「裏方」としての役割が大きかった。しかし最近ではイベントに出演する、歌手として活躍する、タレントとしてテレビ・ラジオにも出演する、グラビアアイドルとして雑誌に掲載され、写真集も出版されるといった表舞台に出てくるようにもなった。そのような時代になって声優として何が必要なのか、そして声優はどのような立ち位置なのかについて、自らの考えを述べている。

第4章「声優の卵たちと、厳しい森川先生」
著者が代表をしている「アクセルワン」には付属の声優養成所「アクセルゼロ」がある。そこでは2年間声優になるための基礎を磨くコースが用意されており、声優の卵を見つけ、育てることを主体としている。著者はそれ以前にも勝田声優学院に通いながらも多忙になるまでは講師を務めた経験があり、声優としても含めてのノウハウを教え、なおかつ自己研鑽を促し、声優としての重要性や厳しさを伝えている。著者自身もまた勝田久氏を始め様々な先輩方にに厳しい薫陶を受けて現在のポジションがある。その恩返しをこれからの声優界を盛り上げていくために、後進の育成にも力を注いでいる。

第5章「帝王が目指すもの」
これから声優として著者はどこを目指すのか、そして声優業界はどこに目指すべきなのか、30年以上のキャリアを踏んでいった中で思ったことを綴っている。

今となってはメジャーな職業としてスポットライトを浴びているのだが、もっとも声優の仕事自体は競争社会の中でも厳しい分類に入る。どこの世界でも厳しいのだが、かつては裏方から、今となっては「花形」に近いほどにまでなった。著者自身もその隆盛を肌で感じ、そして乗じつつもこれからの声優業界を見据えて本書を上梓したと推察する。

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