本書は短編集であり、表題を含めて5編収録されている。その5編は舞台も境遇も異なるとは言えど、共通している部分として「どん底」という言葉がある。その「どん底」が海にもそれぞれあるのだが、そこが深い所を意味している所から「海」を連想できる。
ちなみにそのどん底としてはアメリカ的な考え方や精神から来ているものが多い。またそのアメリカ的な精神と、それぞれの主人公はそれなりの年齢であるため、「老い」と「死」を考える時期でもあるだけに、それらに葛藤する描写も色濃く映し出している。
もっとも本書は著者の遺作であり、没する直前に脱稿して、没後に原作が出版された(日本語訳された本書は今年の5月1日に発売)。そのため否が応でも「死」という言葉に直面している部分があり、物語の人物たちに映し出しているのかもしれず、死への恐怖、さらにはその死にたいしてのどん底な思いが本書の短編集にしたためられているといえる。
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