不思議なタイトルである。もっとも糖には口があるのかと思ってしまうほどである。ちなみに本書のタイトルにある「おしゃべりな糖」は
「情報をになう糖」(p.iiiより)
とある。糖によっても種類があるのだが、情報伝達に優れており、生命の維持のなかでは重要な要素を持っているのだが、頭が良くなったり、病気が治るなどの効用には直結しないのだという。そういった糖はどのような種類でどのような役割を担うのか、本書はそのことについて取り上げている。
1.「おしゃべりな糖が命を支える」
本書で言うところの「おしゃべりな糖」は「糖鎖(とうさ)」と呼ばれるものである、調べてみると、
「多数の糖が脱水縮合により鎖状に結合したもの。蛋白質や脂質のうち、細胞の外側にあるものの多くに結合し、細胞同士の認識や相互作用に関わる。ABO式血液型は、赤血球表面の糖鎖の違いにより決まる。」(「広辞苑 第七版」より)
とある。糖というとブドウ糖といったものから、セルロース・デンプンなどが挙げられる。しかしそれらは「単糖」と呼ばれる糖の個体であり、糖鎖はそれらを連結してできたものである。
2.「糖鎖はどこで何をする?」
糖鎖の組み合わせは無限大に存在しており、それぞれ得られる情報は異なってくる。その糖鎖はいかにして体内での情報をやりとりしているのかを取り上げている。実際に糖鎖が動くところとしては細胞の表面であり、その糖鎖のなかにあるコード、すなわち「糖コード」によってやりとりされるという。
3.「糖コードを読み取る―浮気なレクチンの秘密」
1.のなかの定義でも取り上げたのだが、人間の血液型にも「糖コード」は直結している。その糖コードを読み取るのが、本章のサブタイトルにて浮気者呼ばわりされている「レクチン」と呼ばれるタンパク質の一種である。
4.「ミルクのオリゴ糖がきた道」
オリゴ糖というと健康食品では有名であり、ビフィズス菌などの善玉菌を増やすことができる作用があるとして人気がある。ちなみにオリゴ糖は糖鎖をつくるうえでの重要な要素になると言う。そのオリゴ糖の中にはミルクから来ているものもあり、本書はそのことについて言及している。
5.「糖鎖をつくる、糖鎖をこわす」
糖鎖は単糖がいくつも集まると言及したのだが、その糖鎖は離合集散する。それは糖鎖をつくったり、逆に壊したりすることの繰り返しにより糖鎖、およびその中にある糖コードの情報を作り替えていると言うものである。そもそもどのようにして糖鎖が作られ、ぎゃくに壊していくのかその工程は複雑であるのだが、その複雑さはあたかも工場における手作業などの細かい作業に喩えられる。
6.「糖コードと健康」
糖コードは健康にも大きく影響している。その糖コードの変化は例えば細菌をはじめ、薬の物質によって変化を起こす、その変化が病気を治す、逆にかからせるなどの効果もある。
本書のタイトルをみてどういうことかと思ってしまったのだが、このおしゃべりな糖こそ、人間としての根幹をなす要素の一つであり、構想的に理解することは普段ある糖のように甘くはないと言える。その片鱗を知ることができる一冊が本書である。
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