細菌が人をつくる

この頃「菌活」なるものが流行している。かくいう私も体調を整えるなどをするにあたり、ヨーグルトなど、体に良い菌を積極的に摂取をしている。

私事はさておき、人間の体内も含めて世の中には数多くの「菌」が存在している。それは人間や自然にとって良い菌もあれば、逆に悪い菌もあるため一概に「菌=悪」とはとても言い切れない。もっともその「菌」によって人間がつくられるといった話もあり、本書はその証明をしている。

第1章「細菌としての肉体」
諸説あるものの、

「私たちの体には100兆個を超える数の微生物(主に細菌)が存在するといわれています。」衛生微生物研究センターホームページの「人体と微生物の関係」より)

とある。数だけ見ると想像を絶するのだが、元々人間として生きていく上で細菌と上手く付き合っていく必要があることはよく分かる。もっとも人間としての肉体もまた細菌によって構成されており、皮膚や内臓などそれぞれの器官においてどのような菌があり、働いているかがよくわかる。

第2章「どのようにして細菌が身体に定着するのか」
そもそも細菌は体の中で作られるのもあるのだが、外から体に定着するものもある。特に定着する菌はどのようにして、体に定着していき、役割を果たしていくのかを図にして取り上げている。

第3章「病気であること、健康であること」
病気にしても、健康にしても「菌」が大きく関わってくる。特に病気についてはどのような菌がもたらし、どのようにして発症するのかといった具体的なメカニズムを取り上げている。

第4章「腸脳相関」
「腸内細菌」と言うと、イメージするのは健康食品のイメージである。よくあるのがヨーグルトと言ったところである。その腸内細菌をいかにして良いものを作っていくかによって病気・健康が左右される。また脳の作用についても細菌によって関わってきており、内臓と脳における細菌の働きに相関していると言われている。本章のタイトル「腸脳相関」もその相関関係から来ている造語である。

第5章「細菌群集をハックする」
細菌をハックすると言ってもどのようにしたら良いのかイメージがつかない。分かりやすいものとしては流行している菌から菌の増殖を抑える、あるいは菌を殺すといった抗生物質、いわゆるワクチンを生み出すことが「ハック」の一種である。

第6章「抗生物質」
そのワクチンを生み出してもイタチごっこの如く、ワクチン耐性を持ったウイルスが生まれ、体を蝕み、また新たなワクチンが生み出されという繰り返しである。その現状を取り上げているのが本章である。

第7章「未来のこと」
人間に限らず、動物が生きていくにあたり、「菌」は切っても切れないものである。その菌と人間との未来はどのような関係にあるのか、その展望を紐解いている。

私たちと菌の関係は本書を見ていった中でも分かるように深い。その深い関係だからでこそ、人は細菌に対して忌避をするのではなく、どのように付き合ったら良いか、そのことを考える必要がある、本書はそれを再認識した一冊と言える。