日本の「ものづくり」は世界でも有名なところと言われているのだが、実はそのものづくりを支えていたのはファナックやインテルなどの海外企業における「機械を作る機械」によってもたらされているという。つよいものづくりを行っていくためには機械にて生産を作るのだが、さらなる裏方としてその機械をつくる会社の存在もある。本書はそのなかでタイトルにもある2つの企業の戦略について取り上げている。
第1章「世界最強の裏方産業はどのようにして生まれたのか」
両者とも世界的にも有名な企業になっていったのだが、両者とも「基盤」をつくり上げる企業として知られている。もっともインテルはパソコンでも当たり前のように搭載されている「CPU(中央処理装置)」や「半導体メモリ」が最も有名である。一方のファナックはというと、実際の生活では馴染みがないかもしれない。もっとも作っているのは「工作機械用CNC(コンピュータ数値制御)装置」が中心となるため、工場で働いている方々にとっての方が馴染み深い。両企業の生産高と輸入依存度などの統計をもとにどのように裏方産業を席捲していったのかを取りあげている。
第2章「誕生―ファナックとNC工作機械」
ちなみにファナックは日本の企業であり、設立当初は富士通の子会社として「富士通ファナック株式会社」として設立されたことが始まりである。やがて独立を果たし、数値制御システム(NC)を誕生させ、それを利用した工作機械の開発にも取り組んだ。
第3章「マイクロプロセッサの誕生とインテルの戦略転換」
インテルは設立当初から半導体メモリなどの開発に長けていた。やがてCPUと呼ばれるマイクロプロセッサの開発を世界で初めて行われ、誕生し、コンピュータの世界を席捲するようになった。そうインテルの「戦略転換」はメモリからマイクロプロセッサへの転換だった。
第4章「ファナックとインテルの遭遇」
ともに機械でありながら分野の異なる2つの企業が遭遇することとなった。それは形は違えど共通する「コンピュータ」と呼ばれる存在である。その両方の関係が遭遇し、さらには共同開発まで行われるようになった。
第5章「日米の盛衰はなぜ分かれたのか」
技術覇権争いは今もなお行われているのだが、国単位では1960年まではアメリカが覇権を握っていたのだが、やがて衰退し、今度は日本が1980年代まで覇権を握ることとなった。しかしながら、90年代に入ると、アメリカが勢いを取り戻す一方で、日本は衰退し、再逆転した。その差はいったい何なのか、本章にて取り上げている。
第6章「工作機械のデジタル化と知能化、そしてIoTへ」
技術は年々進化を遂げている。その進化の中でAI化もあれば、さらにはIoTといった技術まで誕生し、両技術とも私たちの生活に浸透しつつある。これからの技術はどのようになっていくのか、その青地図を見出している。
「工作機械産業」と呼ばれている業界は私たちの生活の礎の中に築かれている部分がある。とはいえ、企業や技術によっては馴染みのないものもあるが、「ものづくり」という観点ではなくてはならない産業であり、技術覇権の根幹を成している。その産業の歴史がここにある。
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