今となっては少女漫画は当たり前のように存在しているのだが、その絵のタッチにも根源があるという。著者曰くそのタッチの起源としてアルフォンス・マリア・ミュシャの作品群を挙げている。なぜそのミュシャの作品群が少女漫画に影響を与えたのか、さらにミュシャ以外にも少女漫画に影響を与えた画家もいるのだという。どのような人物なのか、本書では取り上げている。
第一章「明治ラファエル前派と投稿空間としての『明星』」
明治時代において多くの文豪がいたのだが、田山花袋、与謝野晶子・鉄幹夫婦、尾崎紅葉、柳田国男らの作品、あるいは雑誌の挿画として共通する人物として一条成美(いちじょうせいび)がいる。なかでも詩歌を中心とした雑誌で与謝野鉄幹が主宰した「明星」にて最初の間だけ担当したことがあったことにある。一条成美とミュシャの関係は第三章で取り上げている。
第二章「言文一致と日露戦争」
今となっては小説にしても詩歌にしても、様々な挿画が描かれており、一条成美が挿画を行っていた時代の前後から雑誌・小説などの表紙にて挿画が描かれた。ただ、本章を見る限り、人物画を挿画として描かれたのは一条成美が初めてと見て取れる。また一条成美の挿画は単純に人物画ではなく、本筋の物語と一致した挿画が描かれており、物語の世界を誘うには十分な挿画を描いている。
第三章「明治のミュシャ、一条成美とその運命」
ミュシャと一条成美の関連性として元々ミュシャが描いた女性の絵を一条が模倣している所もある。今となっては著作権法違反にあたるようなものであるのだが、当時はそういった法律がなかった、もしくはあったとしても緩かったのも挙げられる。またミュシャと一条は表紙の挿画を行っており、ミュシャ自身も戯曲などの著作物の挿絵を描いていた。もっともミュシャも一条も女性の挿画が細やかであり、それが今日ある少女漫画の絵の源の一つとなっている。
少女漫画の起源というよりも少女漫画の中の「絵」としての起源が中心となっている。もっとも漫画にしても絵巻物が起源としてあるため、挿画のタッチが今日ある少女漫画のタッチと似ていることから著者はミュシャや一条成美の挿画を辿っていったのかもしれない。
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