甦えれ 資本経済の力

資本主義経済は死んでいるかというと、実際にはどうなのかはわからない。ただ、少なくとも、新型コロナウイルスの感染拡大をはじめとした経済環境の変化が多く起こっていることは間違いない。そのような環境の中で、資本経済の復活の道はあるのか、そしてそのためにはどうしたら良いか、そのことを提言しているのが本書である。

1.「<資本>とは何か」

そもそも「資本主義」の「資本」は何かというと、

① 事業のもとでとなる金。また,比喩的に仕事や生活を維持してゆく収入のもととなるものをもいう。
② 株式会社の営業のため株主が出資した基金の全部または重要部分を示す一定の金額。資本の金額は登記または貸借対照表により公示される。
③ 土地・労働と並ぶ生産要素の一。過去の生産活動が生み出した生産手段のストックで,工場・機械などの固定資本や原材料・仕掛品・出荷前の製品などの流動資本からなる。マルクス経済学では,剰余価値を生むことで自己増殖する価値運動体として定義される「大辞林 第四版」より

とあり、経済的な側面では主に②や③で表すことが多い。しかし著者に言わせると、

わたしは、すべてが「資本 capital である」と考えています。実際にそうです。p.20より

と定義している。もっとも資本というと、お金のイメージがあるのだが、実際には文化にしても、国家にしても、資本であると定義しており、その資本をもとにして、お金などのやりとりを行っていることだと、著者は考えている。

2.「「産業<社会>経済」の観点から商品の現経済を考えなおす」

経済を動かす要素で最も大きいものとして「産業」があるのだが、その産業を回すこととしてもモノ・コトのやりとりと言ったものがある。それは商品売買、さらにはサービスの売買などが挙げられる。特に後者の傾向が強まってきているのだが、著者はむしろモノの経済へ戻していくことを提言している。

3.「資本経済のための知的資本」

資本は何も形あるモノばかりでなく、「知的資本」と呼ばれる、「知識(Knowledge)」もまた資本の一つであるという。その資本をいかにして管理していくか、そして知的資産は日本において、どのような歴史で生まれたのかを紐解いている。

4.「資本経済と日本の文化資本」

資本は「文化」にも及ぶ。その文化は日本独自の伝承や衣食住はもちろんのこと、言語もまた「資本」の中に入るという。その資本のあり方はどのように定義しているのかを本章にて取り上げている。

5.「消費社会、物質文化、そして市場の本源」

資本経済を紐解いていっても行き着くのが「モノ」である。モノの消費もあれば、市場を動かしていく要素として「モノ」の流通が挙げられる。とはいえ、形のないものや文化といったものも資本としてあげられるのであれば、「消費」や「市場」はどのような意味をなすのかを取り上げている。

6.「資本経済とマネジメント論」

資本に限らず、市場や経済は常に変革している。その変革がどのような方向にしたらよいか、マネジメントの側面から提言を行っている。

「資本主義」というと経済的な側面が非常に強く、なおかつ資本そのものもモノやカネが中心と考えられる。しかし本書は「文化資本」といった側面からの資本経済をどう見ていくかという経済とは異なる学問であり、それを紐解いていることを付け加えないといけない。