保育園に通えない子どもたち

保育園の「待機児童」について取り上げるメディアは少し前まであったのだが、ここ最近では新型コロナウイルスや東京オリンピックのことが中心となることが多く、あまり取り上げられない実情がある。

もっとも保育園に通えないのであれば幼稚園に通えばいいじゃないかという意見もあるのだが、根本的に「幼稚園」と「保育園」には大きな違いがある。まずは目に見えないところで言うと、「幼稚園」は文部科学省管轄である一方で、「保育園」は厚生労働省管轄であること、他にも目的や保育時間にも差がある。ベネッセの教育情報サイトの「表で比べる! 幼稚園と保育園の違いはココ!」にて、タイトル通り表にして比較されているため参考にすると良い。

本書はその保育園に通えない子どもが今もいる状況だが、その根本的な要因と対策はどこにあるのか、そのことについて取り上げている。

第一章「「無園児」は、さまざまな問題を解く鍵になる」

本章によると日本では無園児が約9万5千人もいるという推計がある。もちろん内閣府などの資料をもとにして提示した数である。背景には色々とあるのだが、主な要因として共働きの世帯が多くある(他にも妊娠や出産、保護者の疾病・障害などもある)。

また無園児になる要因として、経済的な「格差」がある。経済的に潤沢かどうかにもよって保育園に入園できるかどうかも変わってくる。

第二章「「無園児」家庭の実態――取材を通して見えてきたこと」

もっとも無園児になる要因は経済的な要素ばかりではなく、アイデンティティや発達といった面でも存在すると言う。本章では特に後者の2つについて実際に保育園に入園できない子どもたちとその家族の姿を追っている。

第三章「 周りができることは何か――国の政策、地方行政、地域の支援」

2019年10月から幼児教育・保育の無償化が始まったのだが、その無償化の条件についても事細かに異なっている。保育園だけでもいくつか種類があり、「認可保育所」や「認定こども園」「認可外保育施設(無認可保育所などが類する)」があり、無償になるか、あるいは一定金額まで補助が受けられるかが異なる。しかしその補助や無償化は果たして子どものためになっているのか、もっと根本的に解決すべき事があるのではという考えも著者にある。根本的解決に至るまでの提言を本章にて提示している。

ここ最近では保育所に通えない、もっと言うと事情により、通うことも難しい所も出てきている。理由としては新型コロナウイルスもあるのだが、それ以上に、家庭を始め社会の変化に応え切れていない部分もある。本書はその現状がありのままに示されている。