悪漢(ワル)の流儀

戦後最大の経済事件として扱われている「イトマン事件」。その首謀者の一人が本書で紹介する許永中である。許永中はフィクサーとして裏から世界を支えていった。表舞台に立つことは少なく、イトマン事件で初めて出てくることになったとも言える。

現在は経済事件における服役を終え、韓国・ソウルに在住している。かつては日本で活躍したことから在日韓国人の代表格としても扱われることがあった。その許が自ら人生と、様々な交友関係、そしてそれぞれの経済事件を明かしている。

1章「道」

許は日韓にて数多くの人物と関わりを持った。日本の政治では亀井静香と蜜月時代を築き、アウトローの世界では三代目山口組若中であり、「在日の天皇」とも呼ばれた柳川次郎と、韓国では第14代大統領の金泳三などの交流があった。

2章「漢」

本章では五代目山口組若頭の宅見勝をはじめとした関わりと、冒頭でも述べた「イトマン事件」を赤裸々に明かしている。特にイトマン事件の後、裁判から服役に至るまでの所から得られれた「生き方」も取り上げている。

3章「夢」

元々許は大阪市大淀区(当時、現在は北区)の同和地区と在日韓国人地区の混在したところに生まれ育った。そのため同和や在日韓国人に対してのアイデンティティもあった。大山倍達や柳川次郎の関わりがあったこと、さらには昭和天皇の行幸や、ソウル五輪など様々な思いを明かしている。

御年74歳となるが、今でもソウルで様々なビジネスに関わっているという。冒頭でもいくつか現在の写真が掲載されているのだが、いたって「健在」であり、写真で見る眼光は、未だにフィクサーで活躍した凄味がまだ残っている印象が強かった。