日本語に限らず、「言葉」そのものは常々変化する。しかしその変化に許容せず、批判的に見たり、主張したりして「日本語の乱れ」といった主張ができあがる。「日本語の乱れ」自体は清少納言の「枕草子」の時代からあり、今も昔も存在している。
しかし日本語も戦前、戦後と時代と共に変化している。本書は今となっては死語である「モガ」「モボ」が登場した1910~30年代、ちょうど明治末期から昭和初期にかけて、識字率が向上したところで出てきた流行語として「モダン語」がある。なぜこのモダン語ができたのか、そしてモダン語とは一体どのようなものかを取り上げているのが本書である。
第1章「モダン、そしてモダン語とは?」
そもそも「モダン」と言う言葉が英語で「近代」「現代」を指している。もっともモダン語が使われてきたのが大正時代の最中、「ハイカラ(はいから)」という言葉も出てきた時代と重なる。もっとも言葉のみならず、自転車やバイオリンが伝わってきて、それを利用する方々のことを「はいからさん」、ファッションなどでも「ハイカラ~(~には「頭」や「趣味」などが入る)」といったものがある。もっとも文化とともに言葉も「モダン」が入ってきた。中には戦後になっても「モボ」といった言葉が使われることもあった。
第2章「百花繚乱――モダン語のパノラマ」
モダン語が栄えていた時代は江戸時代以前ほどではなかったものの、階級を含めた格差が残っていた。また経済的な格差のところから「遊民」や「貧民」「成金」などがあり、それぞれの身分で違った「モダン語」ができあがった。またモダン語はどのように成り立っているのかを取り上げているが、捩りや動詞のヴァリエーションが特徴的である。
第3章「行き交う言葉と変転する文化」
現在でもサザエさんのアニメは毎週日曜日に放映されるのだが、その中で未だにちゃぶ台が残っているのも印象的である。このちゃぶ台はこの「モダン語」が栄えた時代に重なって生まれたものである。
第4章「モダンの波頭を切るガール」
モダンなファッションなどを行う人を男性では「モボ」、女性では「モガ」と言われていた。特にモガはどのような傾向があったのか、本章ではその傾向を取り上げている。
第5章「モダンを超え、尖端へ、その先へ」
「モダン」と言う言葉が栄えた時代の時にもう一つの言葉があった。それは「尖端的」である。実はこの言葉は辞書にあり、
事物の流行などの先駆をなすさま。先端的。「広辞苑 第七版」より
とある。今となってはあまり聞くことがなく、死語に近い部分もあるが、対象~昭和初期にかけて使われていた。しかしこの「モダン」と「尖端的」は同じような意味であるのだが、モダンに代わり「尖端的」と使われ出し、流行したのだという。
第6章「エロとグロとその後にくるもの」
エロ・グロ(テスク)・ナンセンスは文化の一つとして存在しており、特に当時の「モダン」文化にも大きな影響を与えた。特に文学作品に影響があり、日本の名作の中にも最初に述べた3つの要素がふんだんに入っている。また文学作品のみならず、レヴュー(レビュー)などの舞台作品にもあり、本章でも取り上げている。
第7章「アジア、ローカル、アメリカとの往還」
モダン・尖端的のルーツは色々とあるのだが、特に海外の影響はあった。特にアジア諸国やアメリカの影響は大きく、ファッション・音楽などが入ってくるようになった。またそれらをヒントに新しい文化を生み出し、日本独自のモダン・尖端的な文化も生み出していくようになった。
近代的な「流行」の中で海外の影響を受けたものとして最初にあったのが「文明開化」だったのだが、モダンはその次にあたるのかもしれない。しかしこの「モダン」の時代を経て、日本は近代化の道をさらに拓き、そして現在の日本へと変わった足がかりの位置づけになったのは言うまでもない。
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