ヤングケアラーってなんだろう

「ヤングケアラー」と言う言葉を初めて聞くが、

法令上の定義はありませんが、一般に、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている子どもとされています。厚生労働省「ヤングケアラーについて」より

とある。特に介護などのケアヘルパーなどで行うことを親族、それも子どもたちに行うことである。あたかも「美談」としてとらえがちだが、じつはヘルパー不足といった問題もあれば、学校生活への悪影響などの負の側面もあるため、あまり知られていない「問題」として挙げられる。

しかもケアをする子どもたちも、当然手探りの状態から行わなければならず、肉体的・精神的な負担を強いられてしまい、なおかつ毎日行わなければならないなどもある。本書はヤングケアラーの実態とサポートについて取り上げている。

第1章「「ケアする人」のケアへの注目」

昨今では団塊世代と呼ばれている世代が後期高齢者となり、その一つ下の世代もだんだんとリタイアしていく。そのことにより、働く人がだんだん減っていき、その逆に介護を必要とする人が増えている。ちなみに「働く人の減少」はケアを行う人でも減っていることもイコールである。

働き手の減少に伴うことにより、本来行うべき事に、さらに家族のことが追加されるなど、役割がだんだんと多くなっていき、「過多」と呼ばれる状態に陥る人も出てきている。その中に出てきたのが「ヤングケアラー」の問題である。

第2章「実態調査から見えてくること」

メディアでも少しずつ出てき始め、厚生労働省でも問題視しており、特設ホームページまでつくられるようになった(特設ホームページには著者のインタビューも収録されている)。本章ではヤングケアラーが誰に対して行われているのか、また日本に限らず海外でのヤングケアラーの実態とは何か。実際のアンケートなどの調査でもって取り上げている。

第3章「ヤングケアラーが語る自身の経験」

本章では子どもの時から母親のケアを行ってきたヤングケアラーの取材とともに、どのようなケアを経験してきたのかを綴っている。

本来であれば学校生活に全力を注ぎたい年頃だったにもかかわらず、母親が交通事故に遭ったことにより、介護を必要となった。そして子どもは学校に通いながら、また母親のケアを行うようになった。介護サービスを行えば良いのだが、事情もあり、子どもを始め家族全員でケアを行っていかなければならない窮状もあったという。

イメージだと中学・高校の頃からやったのかと思っていたのだが、読み進めていくうちに、年端も行かぬ時から行ってきた事に衝撃を受けた。

第4章「ヤングケアラーをサポートする人たち」

ヤングケアラーがいる状況をサポートを行う所も出てきている。当事者同士の交流会はもちろんのこと、家族会などの相互扶助の団体もあれば、都道府県の中には条例が制定される所も出てくるなどの動きもある。

「ヤングケアラー」の言葉、さらには実態について本書に出会うまでは全く知らなかった。少し調べてみると、その実態はニュースでも少しずつ取り上げられてきており、ようやく明るみに出たという印象である。しかしこの問題をどのようにして解決していくべきか、労働や介護、さらには教育などありとあらゆる面において考えなくてはならない問題だということもまた思い知らされた一冊である。