ドッグレース

アウトロー探偵が、元々いたアウトローの世界に戻り「人捜し」を行うというものである。しかもある事件の容疑者もまた「密売人」というアウトローの稼業。その弁護人に依頼された探偵という構図であるのだが、謎が謎を呼ぶような事件の人捜しで、なおかつアウトローの世界であるだけに、抗争の如く銃撃戦をくぐり抜けながら捜していくというさながらミステリーというよりもヤクザ小説の様相を見せている。

しかもその戦いはよく航空戦における「ドッグファイト」を彷彿とさせる。その連想から本書のタイトルにしたかどうかは不明だが、そもそもタイトルにあるドッグレースの本来の意味は「犬の競走」であり、犬ぞりレースが有名である。

なぜ著者がドッグファイトでなく、ドッグレースとしたかは不明だが、銃撃戦を含めたスリリングな展開はむしろ「ドッグファイト」のような様相だったため、「ドッグファイト」の方が適当ではないかとも思ってしまう。ただ本書のシリーズの中には「バードドッグ」「水の中の犬」といったように「犬」「ドッグ」が見受けられる。本書の主人公は元ヤクザの探偵であり、アウトローの舞台となると、主人公と「犬(ドッグ)」の関連性が見えてくるのかもしれない。

とはいえど、スリリングさとアウトローの部分はかなり際立っており、読みごたえは文庫ながらかなりあった。