1945年8月6日午前8時15分
アメリカが原子爆弾「リトルボーイ」を投下し核爆発を引き起こした。それにより広島市内のほとんどは焦土と化した。その後も「黒い雨」をはじめとした二次被害が相次ぎ、今もなお「被ばく」は現在進行形で被害を受け続けている現状がある。
本書はその中でも「黒い雨」にまつわる「訴訟」が起こっており、本書はその訴訟の顛末を取り上げている。
1章「“降らなかった” 黒い雨」
「黒い雨」とは何かというと、
黒い雨(くろいあめ)とは、原子爆弾投下後に降る、原子爆弾炸裂時に巻き上げられた泥やほこり、すすや放射性物質などを含んだ重油のような粘り気のある大粒の雨で、放射性降下物(フォールアウト)の一種である。Wikipediaより抜粋
とある。原爆が投下された後に雨の予報があったのかと言うと、天気予報の資料がなく分からない。しかしその天気予報に関係なく、原爆投下によるキノコ雲にある、粉塵を含んだ煙は最大高度約16,000メートルに達したと言われている。原爆による爆風と、上空で熱が冷やされ、雲となり、雨となった。その雨は上記Wikipediaに表しているものである。
この「黒い雨」により土壌・建築物・河川を汚染し、二次被爆の引き金にもなった。その黒い雨の降った範囲を巡っての議論、さらには調査についての闇を暴いている。
2章「選別される被爆者」
被爆者に限らず、災害・戦争においての負傷者に対していわゆる「トリアージ」というのがある。病気や怪我の度合いによって「選別」を行うトリアージ自体に批判が起こることは今回の原爆に限らずどの災害・戦争でも起こりうる話だが、本章ではあくまで原爆における所を指している。
3章「雨が「卵形」に降るか!」
第1章で「黒い雨」について説明を行った。そもそも自然な雨だと偏西風などからやってくる雨雲によって降ることが一般的とされている。しかし「黒い雨」の場合はキノコ雲の雲が冷却され、湿った空気が含まれ雨となって降る仕組みのため、ある種「人工」の部分も捨てきれない。では「人工」の部分があるとどのような雨になるのか、科学的な見地でも難しい。そのため「卵形」の雨が降るかというと絶対降るとは限らないが、その降る範囲により、議論の的になり、次章以降の訴訟の材料にもなった。
4章「「黒い雨」訴訟」
「黒い雨」の被ばくについて訴訟があった。2005年に広島市を相手取っての、救護被曝者訴訟である。それが国にまで相手取ることになったのが2015年11月のことである。
5章「私たちは、嘘はつけないの」
この訴訟を受けて、厚生労働省では「黒い雨」の対象地域の見直しに着手することになった。訴訟は高裁まで行き原告の勝訴で確定となった。しかし原爆被害に関しての検証はもちろんのこと、被害救済についての話はまだまだ終わっていない段階で、完全に解決したわけではない。
本書のメインとなるのが2015年に提訴された救護被曝者訴訟の事であるが、そもそも70年にもなってなぜ、と思われる方々もいるかもしれない。それは「まだ終わっていない」と言う言葉が核心に入っており、原爆自体は実際に被ばくした人の子ども、さらにはその孫にまで被ばく二世・三世といった形で伝わっているのが現状である。しかしその救済がどこまで行う必要があるのか、その線引きも被ばく者・自治体・国とでついていないのが現状である。
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