国際化時代の地域経済学

日本の経済はいまは急速に減速しているとはいえ、それまでは「戦後最長の好景気」と呼ばれていたが、地方からしてははた迷惑な好景気であったように思える。今経済は「グローバル化」の波が押し寄せており、地域経済ももはや他人事ではなくなっている。ただでさえ好景気のあおりを喰らって夕張市のように財政再建団体に入り、その予備軍もたくさんあるのにもかかわらず「グローバル化」の波が押し寄せれば埒があかない。しかしもうすでに押し寄せ始めている以上何らかの施策を考える必要はある。

本書はそんなグローバル化における「地域」についての考察とどうしていくのかという所にスポットを当てている(本からわかるとおり大学の教科書だが)。

第1章「グローバル化の中の地域経済」
本来「地域」というのにも解釈によって意味合いが非常に異なる。日本の首都東京でも「地域」と呼べるし、人口が数100人しかいないところでも「地域」と呼べる。非常に意味合いの多い単語である。では本書にある「地域経済学」上での「地域」とは一体何なのかというと「工業」というのが切っても切れないものになっている。産業や工業によって生産される場所やその一帯の所をおそらく「地域」と定義しているのだろう。

第2章「現代日本の地域経済と地域問題」
日本は戦後工業の発展により奇跡的な経済成長を遂げGDPでは世界第2位にまで伸ばしてきた。しかしその代償として一極集中が顕著となり、地域格差とともに深刻な問題となった。これこそ一刻も早く解決すべきであるその証拠として2001年にアルゼンチンがデフォルト(債務不履行)宣言を行い世界的に信頼を失墜したが、その原因の一つとして首都ブレノスアイレスへの一極集中が原因と挙げられる。

第3章「地域開発政策の検証」
地域開発はそれまでないがしろにしていたわけではない。バブル景気では87年に施行された「リゾート法(総合保養地域整備促進法)」により過疎地域の至る所にホテルやゴルフ場、スキー場の3点セットと呼ばれる大規模開発により経済を活性化しようとした。しかしそのツケが地方に集中し、軒並み財政赤字となり、2006年に北海道夕張市が財政破綻をした。それを促進した政府にも糾弾するのは簡単であるが、こうなったら地方財政をどうするかというのも課題の一つと言えよう。

第4章「地域づくりをどう進めるか」
このようになってしまった地方であるが、これからの「地域づくり」をどうしていくのかというのが大きな課題であろう。さらに住民投票や住民参加と言ったことも必要なもののひとつであるが、今一つ成果が上がっていないというのが現状である。地方財政も国以上に困窮となっており、いつどこで財政破綻が起こってもおかしくないところまで来ている。その中で地域独自の街づくりを行っているところもあるがごく少数であろう。

補論「地域を調べる」
地域政策を専門とする大学生にはぜひ一読いただきたい所である。それに関する論文を書くときにもこれはなかなか役にたつであろう。

第1章では「地域経済学」を学術的に見ているが、第2章以降はいま抱えている地方問題の背景について非常に詳しく書かれていた。とりわけ地方財政については統計的なデータを交えながらの説明であったため地方財政を専攻している人達には教科書にしては読みやすい内容と言える。