誰もは一度「ギリシャ神話」というのを聞いたことがあるだろう。「ギリシャ神話」についてはもっと深く学ぼうとすると日本神話に匹敵するほど奥が深く、さまざまな神の名前などを知る必要があるので結構とっつきにくいものがある。本書はギリシャ神話を学ぶ「入口」としてとらえるといいだろう。
第一章「ヘシオドスのプロメテウス神話」
ギリシャ神話と言っても一口で語ることは難しい。これは日本神話も同じことが言える。さて、日本神話で「古事記」や「日本書紀」にあたるもの、すなわち古典は何なのかというと数多く存在するが、もっとも古いものでは「イリアス」や「オデュッセイア」の二篇の叙事詩からである。紀元前八世紀にできた作品である。さらに古い作品では「神統記」というのも存在している。作品はほかにも多数存在するが、作品を紹介していくと日本神話よりもはるかに長く読まれ続けられていることがわかる。
さてこの章ではヘシオドスの「神統記」及び「仕事と日」の中からプロメテウス神話について解説している。
まず出てくるのが「メコネの事件」である。プロメテウスが天界から日を盗んで人類に与えたことに怒ったゼウスが、人間の女性、パンドラを造らせ、プロメテウスの弟であるエピメテウスの元に連れて行かせた。そのパンドラはエピメテウスのところで箱をうっかり開け世界中に災厄を撒き散らせた。「パンドラの箱」と言われるエピソードである。
本章ではゼウス・パンドラといったところが多く出ているのでパンドラの箱についてのエピソードを知っておく必要がある。
第二章「アイスキュロス劇のプロメテウスとペルシア戦争」
ここではアイスキュロスの「縛られたプロメテウス」について書かれている。余談であるが、この作品はほかに2編(「解放される-」「火を運ぶ-」)あるがどれも失われてしまうため3部作としてもう成り立つことはない。あらすじは第1章の「メコネの事件」の冒頭のあとカウカソス山の山頂に縛り付けられる。しかしプロメテウスは祖父や父と同じように子から追われる運命にあることなどを予言されたという話である。
プロメテウスはヘラクレスによって解放されたが、縛り付けにされた期間は不明である。その間はハゲタカに鑑三をついばまれると言った拷問が続いた。
続いてヘロドトスの「歴史」の中からペルシア戦争について取り上げている。イオニアの反乱へのアテナイ人の介入により起こった戦争と言われている。有名なものでは「マラトンの戦い」であるが本書で重点的に取り上げられていたのは第8巻の「サラミスの海戦」である。
第三章「ソポクレスの『オイディプス王』」
アイスキュロスと並んで三大悲劇詩人の一人とされたソポクレスの「オイディプス王」を取り上げられている所である。これはギリシャ悲劇の中でも最高傑作と位置づけられている作品である。ストラヴィンスキーの「エディプス王」のモデルともなっている。
テバイの王であるオイディプスは父親を殺害し、母親と性的な関係を持ったことを追及するが、自分だとわかり、自ら目をつぶし、王位を退いたという物語である。
最大の悲劇に相応しく、本章では細かい部分の謎ときがメインとなっている。ギリシャ神話についてあまり知らない人にとってはこの章は最もとっつきにくい所である。
第四章「ペロポネソス戦争と二篇のオイディプス劇」
第三章で述べたオイディプス劇はほかにもう一つあり、同じくソポクレスの「コロイスのオイディプス」というのがある。
そして本章のタイトルの前半にある「ペロポネソス戦争」についても取り上げられている。「ペロポネソス戦争」は紀元前431〜404年まで続いた戦争であり、ペリクレスやアテナイ人らのデロス同盟とスパルタ率いるペロポネソス同盟との戦争であり、結果で言うとスパルタ率いるペロポネソス同盟が勝利したということである。本章ではデロス同盟側の所にスポットを当てている。
私はギリシャ神話に関してあまりよくわからない。そのため文献のみならず様々なツールを使って調べることにより段々と神の名前や事柄について勉強になる。本書は入門書であるが、入門書にしては調べることがあるほど読みごたえがある。そして神話に限らず様々な哲学や宗教を学ぶこともまたおもしろいと気づいたものである。
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