グローバル・エリートの時代~個人が国家を超え、日本の未来をつくる

日本の経済は徐々に回復傾向にあるのだが、その一方で「グローバル化」という波がかねてから到来していて、苦慮している企業が多い。様々な形の「黒船」がやってきては、日本経済を席巻し、振り回されてきた過去があるのだが、日本の多くの企業はほとんど打てなかった、というより打ってこなかった。

そのグローバル化の波に乗る方法は本書の中でも紹介されているのだが、ここではグローバル化の傾向について、「組織」「個人」両方の観点から見ている。

第一部「組織のグローバル化」
第一章「グローバル化の第三の波」
グローバル化に伴うものは就職市場、さらには社内事情も変化していく、就職の場合だと、日本人の門戸を狭くし、外国人採用の枠を増やすと言ったことを行っている。社内事情であれば楽天とユニクロが先だって行われている「社内公用語の英語化」のことである。

第二章「なぜ日本企業の組織のグローバル化が必要になっているのか」
日本では「グローバル化」が必要になっていると著者は主張している。その理由として、日本の消費市場は飽和状態にあり、需要は海外に頼らなくてはいけない状況に入ってきたこと、さらに、市場も海外市場もM&Aなどが盛んに行われてきており、看過できないことなどが上げられている。

第三章「日本は今までどのようにグローバル化の波を乗り越えてきたのか」
ただ、「グローバル化」は今に始まったことではなく、しかも第一章で書かれた様に「第三の波」である。では実際に「第一の波」「第二の波」はいつ、どうして起こったのだろうか。
「第一の波」は明治時代に入ってから、ちょうど鎖国が解かれ、開国したときのこと、西欧の文化や考え方が取り入れられ始めたことによるものだった。その後、大東亜戦争を経て、高度経済成長に入ったときまでの期間も含まれている。
「第二の波」は1980年代、ちょうど「バブル景気」と呼ばれた頃から、崩壊し「失われた10年」と呼ばれた時代にかけて、を表している。

第四章「「組織のグローバル化」を果たした日本企業のストーリー」
日本はグローバル化に乗り遅れている、と言うことをよく聞くが、企業の中にはグローバル化の波に乗り、それだけではなく先端を走っている企業も存在する。本章ではそのストーリーについていくつか取り上げている。

第五章「日本企業がグローバルな組織を構築していくために」
ともあれ日本企業はグローバル化の波に乗っていく必要がある。そのためにはどうしたら良いのだろうか、企業成長のあり方から、企業買収に至るまで本章ではケーススタディとともに網羅している。

第二部「個人のグローバル化」
第六章「グローバル・エリートの時代」
グローバル化は組織だけではなく、個人にもプレッシャーをかけている。海外には様々なエリートが存在するのだが、そのエリートが海を越え、日本から世界各地の市場で暴れ回る、といったことも起こっている。
その時代の中でグローバルに活躍できる人材はどうして求められているのだろうか、本章ではその理由について語っている。

第七章「グローバル・エリートに必要なスキル」
グローバル・エリートというと、英語力ばかりが目に生きそうだが、実は英語力だけでは太刀打ちできない。むしろビジネスマンとしてあるスキル「問題解決能力」や「コミュニケーションスキル」さらには経営者として必要な能力まで、多岐にわたる。それだけではなく一つ一つが果てしないほど高度な能力が求められている。

第八章「日本独自の強みを活かすグローバル化」
だが「グローバル化」という言葉に踊らされて、日本独自の強さを放棄するのは本末転倒である。日本には日本なりの強さがあり、それを活かすことこそ、大きな武器になると著者は主張している。

グローバル化の波は止まらない、それは明治維新の時から戦争の時期を除いてずっと続いている。その波の中でサーフィンの用に乗るためにはどうしたら良いのか、そのグローバル化の意味を知り、自分を知り、企業そのものを知って行くことで対策を立てることができる。本書はそのきっかけになる一冊である。