権力移行―何が政治を安定させるのか

「権力」は未来永劫、同じ所にあるわけではない。日本の政治でも民主党や自民党が政権交代したように権力は年が経つにつれて「移行」してしまう。

本書は日本の政権がどのように「移行」して行ったのか、そしてこれから政権交代はどのように変化をするのか、そのことについて追っている。

第一章「自由民主党「長期政権」の確立」
戦後「政権交代」が行われたものとして、戦後間もないときにはあ1947年(第一次吉田内閣)、1948年(芦田内閣)、1954年(第五次吉田内閣)があったのだが、1955年に「自由党」と「民主党」が保守合同し、「自由民主党」ができあがってからは、いわゆる「55年体制」ができあがり、1993年までの38年にわたって政権は自民党にあった。それ故か「政権交代」と言う言葉すら存在しないものになってしまった。

第二章「政治改革と「改革の世代」」
とはいえ、自民党内でも「派閥争い」と言う言葉があるように、派閥による「権力移行」は度々行われていた。しかし自民党内にも「改革」をする時があった。政権を取り返してから6年後の2001年の事である。俗に言う「失われた10年」の真っ只中にあるなか、改革がいっこうに進まなかったものの、一人の改革者が出てきた。そう、小泉純一郎である。

第三章「小泉内閣はいかに「官邸主導」を作り上げたか」
小泉内閣は約6年間続いたのだが、様々な改革を断行した。目立ったものでは「郵政民営化」だが、彼以前に行った改革として橋本内閣で団交した省庁の改革もあった。その改革を承継し「官邸主導」の政治に結びつけたのが小泉内閣である。他にも経済を回復させるべく様々な会議を開催したのだが、中でも「経済財政諮問会議」がある。

第四章「官僚制の変容」
政権の裏では官僚が手を引くと言うことは度々あった。前政権である野田政権も財務省の手引きにより消費税引き上げを成立させたことで知られている。実際に官僚の中でも権力闘争はあり、省庁の変化とともに変わっていっている。本章では官僚の中のネットワークの変化と政治家との距離について考察を行っている。

第五章「公務員制度改革はなぜ停滞するのか」
「公務員制度改革」は衆議院総選挙でも参議院通常選挙でも嫌というほど、マニフェストで見聞きした。しかし実際に改革が行われているかというと、本章にもあるように「停滞」していると言っても過言ではない。ではなぜそうなったのか、本章ではそのことについて取り上げている。

第六章「進化する政権交代」
「55年体制」が崩壊したのは1993年の「非自民・非共産連立政権」の樹立以降、4回起こっている。1993年以降は、1994年の「自社さ政権」、2009年の民主党・国民新党連立政権、そして2012年の自由民主党・公明党連立政権が挙げられる。戦後政治になってから55年体制以前・以後合わせても7回の交代しか起こっていない。頻繁に起こったら良いかと言えばそうではないが、日本の政権交代は、進化はしている物の、未熟な部分が存在するのだという。

政治もそうだが、政権交代も進化をする。しかし日本は長らく政権が同じ所に居過ぎたせいか、進化が止まっているようにも見えた。2009年の政権交代は総括として間違っていたと答える人は少なくない。確かに民主党政権は与党としての機能も完全に無かったと言っても過言ではないが、政権交代当時の自民党は体たらく状態だったことも考慮する必要がある。約3年半下野していた自民党が強い形で帰ってきたことは、負の遺産はあったけれども、強い自民党になると言う意味では政権交代はショック療法として必要だった。その意味では「正しい政権交代とはなにか」そのことを考えていく時期に入ったのかもしれない。

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