バターが買えない不都合な真実

料理をする人にとってバターは重要なものなのだが、そのバターが数年前から買いづらくなっている。その理由としてバターを1ケース買うだけでも400円もしており、なおかつ1人1ケース限定といった制限まで設けられている。しかしなぜバターが買いにくくなっているのか、そこには農業の衰退というよりも輸出入の事情があるという。それは農業に限らず、外交にも大きくかかわってくるのだが、そのかかわってくる要素について取り上げているのが本書である。

第1章「消えたバターについての酪農村の主張」
バターがなぜ消えたのか、農業の所得が下がったのか、あるいはバターが生産できなくなったのか、統計的な観点で分析しているのだが、そもそも全体的に出荷数が落ちたり、所得が落ちたりするようなことがあったのかにも疑問符を与えている。

第2章「日本の酪農とアメリカの切れない関係」
日本の食料自給率はカロリーベースで39%である(2015年現在)。高度経済成長をピークに右肩下がりの状況になってきているのだが、そもそも食料自給率でもってアメリカをはじめ諸外国の輸入に頼るような状況に陥っている現状がある。もっとも農業発展すれば食料自給率を挙げられるおうにも思えるのだが、実際の所そうではない。諸外国との輸出入のバランスも大切になってくるため、日本の農業を解決するだけではまかなえない領域になっている。

第3章「牛乳・乳製品は不思議な食品」
そもそもバターが不足しているにもかかわらず、チーズや牛乳はなぜ「限定」といった不足や買いにくいような状況が起こらないのか、そこには乳製品ならではの不思議な事象がある。

第4章「複雑な酪農事情と政策の歴史」
バターにおける事情は農業だけでなく、外交もあるため国内外の事情も絡み合い「複雑」なものとなっている。その複雑なものをさらに複雑にしている要因として「歴史」がある。その歴史とは何かを取り上げている。

第5章「乳製品の輸入制度はこうしてできあがった」
現在における乳製品の輸入制度は「ウルグアイ・ラウンド」と呼ばれる時代からできあがった。1986~1994年なので今からおよそ30年ほど前の話になる。その30年前から今に至るまでなぜ制度ができ、持続していったのか、そしてTPP交渉はどのような変化を及ぼすのか、そのことを取り上げている。

第6章「さあ、謎解きです―バターが消えた本当の理由」
バターがなぜ不足している状況にあるのか、そこには政治的な理由がある。他にも「メディア」が影響を及ぼしているのだが、そこから改善をするのかというと、メディアが絡んでいる以上なかなか解決に結びつくことができない。

第7章「日本の酪農に明日はあるか?」
日本の酪農はどうなっていくのか、TPP交渉も行われ、協定が結ばれようとしたのだが、ドナルド・トランプの大統領就任により、TPPも泥沼化してきており、なおかつ農業はこれからどうなるのか、定かではない。

バターの品不足は長らく続いているのだが、今もなお行われている。その中でこれからどうなるのか、現在も先は見えないのだが、その問題の本質を垣間見ることができた。本書を通じてあとは道筋が立つのかどうか、それは政治に関わる部分にもなると言える。