車いす犬ラッキー 捨てられた命と生きる

足が不自由になり、日常に支障を来すのは何も人間ばかりではない。動物もまた、不自由な人生を送ることがある。その不自由な中で捨てられた命を人間が拾い、生き延びることができた犬がいる。その犬は車いすをつけて生きることとなったのだが、そこには生と死のはざまを生きることとなった。その犬と人間との関わりについてのノンフィクションの物語を綴っているのが本書である。

第1章「車いすの犬」
その車いすのついた犬は「ラッキー」と呼ばれ、鹿児島県の奄美群島の「徳之島」と呼ばれる島にて生きている。その犬は車いすをつけ、散歩には軽トラックに乗せられて行くようなこともあるという。なぜ車いすを着けるようになったのか、それは飼い主の不注意により交通事故に遭い、自力歩行ができなくなったという。

第2章「寅の物語」
子犬が野生化することはほとんどないのだが、保健所に預けられ、最悪殺処分されるようなこともある。犬の中には拾われて、生きるような犬もいれば、先述の処分に遭う犬もいる。その2匹の犬の物語を表しているのだが、境遇の違いによる物語は胸が締め付けられるほどであった。

第3章「家族」
飼い犬だって家族である。飼い主と犬との共生を持つことによって動物の命を知り、そして関わりを大切にすることができるようになる。その関わりの一つとして飼い始めたラッキーとの生活を取り上げている。

第4章「生と死のはざま」
そのラッキーに車いすのつくきっかけとなった事故が起こる。その事故は飼い主と一緒に墓参りしている最中であるのだが、その時に起こったのだという。その事故は生死をさまようほどの大けがであったのだが、奇跡的に一命を取り留めたものの、脊髄損傷をしたことにより車いすを余儀なくされたという。

第5章「帰郷」
元々徳之島には犬猫専門の病院がなく、入院をするにも沖縄県の病院に行く必要があった。もちろん退院後に定期的な通院もあり、徳之島と沖縄県を行き来することが度々あったという。その後車いすを着けることになったのだが、そのことについて取り上げているのが本章である。

第6章「走れ! ラッキー」
車いすをつけたラッキーは飼い主の公園整備の仕事に就いていきながら生き生きとした人生を送っている。しかしながら病気による入退院を繰り返しながらも、飼い主と共に生き続けていく。

車いす犬は初めて聞いたのだが、それは人間でも犬でも「生きたい」という思いがなせたものなのかも知れない。そのなせた中で人間と犬との共生について改めて考えさせられるきっかけとなった一冊と言える。