会計学の誕生――複式簿記が変えた世界

私自身会計についての勉強を行ったことが一時期あった。厳密に言うと高校~大学の時代であるのだが、その時は簿記や会計が授業の中心であったため、会計にどっぷりと浸かっていた。その会計は「複式簿記」であるのだが、そもそもどのようにして誕生し、「会計学」という学問に成り代わっていったのか、その歴史を辿っているのが本書である。

第1章「複式簿記の誕生―債権債務の備忘録」
複式簿記の誕生には諸説あるのだが、本書で取り上げている説は「ローマ説」を挙げている。十字軍の遠征が起因して資金が落とされたのだが、複式簿記によってその利益や資産を「備忘録」としてつくられたことが始まりとされている。

第2章「複式簿記の感性―有高計算を帳簿記録で検証」
複式簿記は効率的、かつ公正に行われることが現在の原則としてあるのだが、そもそも礎としてあったのが「コルビッチ商会の帳簿」であるのだという。1333~1339年の6年間の帳簿であったのだが、複式簿記の歴史を語るに重要な要素であると著者は主張している。その主張の理由を帳簿の検証と共に取り上げている。

第3章「世界最初の簿記書とその後の進化―年次決算の確立に向けて」
複式簿記の教科書は今となっては書店にて当たり前のように存在しているのだが、そのはしりとなったのは数学者であるルカ・パチョーリによって上梓された「スムマ」と呼ばれる本からである。「スムマ」自体は算術や幾何学を中心にしているのだが、簿記における解説でも言及し、「簿記論」として唱えられていることから、簿記書の始まりと定義づけられている。

第4章「会計学の誕生―決算書類の登場と会計士」
会計学とは何かというと会計に関する理論・基準・制度・歴史など様々な観点から研究を行う学世紀、問としてあるのだが、そもそもいつから「会計学」の学問は生まれたのだろうか。起源は18世紀のことで、とある照会の残高帳について開示請求をされたことにある。メディアでも事件としてある「粉飾決算」をはじめとした不正会計を追及してのことであるのだが、そもそも会計においてどのような基準が採用すべきか、それを考察していく必要がある。それを研究する学問としてやがて「会計学」が生まれていった。

第5章「キャッシュ・フロー計算書―利益はどこに消えたのか」
会社において「倒産」というと赤字であったり、債務超過に要素が多いように見えるのだが、実はそれだけでなく「黒字倒産」も存在する。利益こそは黒字であるものの、売掛金が多くなり、現金などの運用ができなくなったことからの倒産であるのだが、そこで見ておくべき物として「キャッシュ・フロー計算書(CF)」がある。その計算書の役割と利益の考え方はどのようなものか19世紀におけるアメリカ・イギリスの会計の歴史とともに取り上げている。

会計学は、日本のみならず世界的な経済や企業を運営していく上で重要な学問の一つとしてある。もちろん複式簿記もまた然りである。しかしその「重要な」ものも、歴史を紐解いていくと当たり前にあるものではなかった。経済・文化が育まれた中でできた産物であること、そしてそれが健全に運営できる上での「理性」としての存在であること、その「理性」は絶えず変化していること。会計学の歴史を紐解いてみるとそう考えてしまう。

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