君のむこうを過ぎてゆく雨

有名な曲に「長崎は今日も雨だった」というのがある。この曲は1969年に内山田洋とクール・ファイブのメジャーデビュー曲として発売され、ミリオンセラーにまでなった。その後ソロデビューを果たした前川清によって今もなお歌い続けられている。

それだけ長崎は雨が多いのかというと、実際の所そうでなく、1982年に起こった長崎大水害こそあれど、慢性的な水不足になった時期もあったほどである(冒頭に述べた曲が出た時期もまさにその時期だった)。しかし「長崎=雨」というイメージはこの曲にてつくられたと言っても過言ではない。

本書はその長崎、それも九州から少し離れた「五島列島」を中心に、長崎の島、さらには2015年に世界文化遺産に登録された軍艦島(端島)を舞台とした初老の男女が繰り広げる愛の物語である。出版が長崎新聞社であり、なおかつ著者も長崎県の大村市に在住しているからでこそ描ける長崎ならではの描写、そして初老の恋愛模様を描いており、甘酸っぱい学生の恋愛とはひと味もふた味も異なる恋愛があり、その点が魅力的であった。

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