「おもてなし」という残酷社会

2013年に2020年東京オリンピック誘致に向けてフリーアナウンサーの滝川クリステルが「お・も・て・な・し」をアピールしたことにより、日本における「おもてなし精神」が世界的にも認知された。しかし著者はその一方で「おもてなし精神」が過剰になったことにより、労働者の感情労働が支配することにより、労働者のストレスを増長するきっかけになると著者は指摘している。

第1章「なぜ、過剰な「お客様扱い」が当たり前となったのか」
特に接客業や商売などを中心に「顧客満足(Customer Satisfaction・CS)」が中心となってくる。もちろんお客様目線で行うことによって成り立つのだが、その度合いが強くなることによって、顧客満足を意識するが為に過剰なサービスをする、どんなことに対しても謝罪をするようなことさえもなるという。

第2章「あらゆる職業が感情のコントロールを強いられる社会へ」
「感情労働」は何も接客業ばかりではない。ネット時代における商売も然りである。お客様目線を求める必要があるのだが、行き過ぎた「お客様第一」を求められることもあり、対面でなくても、メール・電話などのツールにおいて感情労働が強いられるようになったと指摘している。

第3章「「お客様は神様」という発想が働く現場を過酷にする」
「お客様は神様です」という言葉を生み出したのは三波春夫であるのだが、そもそも三波自身は公演をする際にはお客様を神様に見立てて、真摯に歌うということを取り組むこと、そしてMCとの掛け合いの中でウケが良かったから使ったことの2つを意味している。そのため何でもかんでも「お客様を神様」として客に媚びているわけでなく、歌をはじめとした芸道を見せることへの姿勢を意味している。それが曲解されて、お客様が絶対的に上の立場として扱われるようになり、三波本人、さらにはオフィシャルサイトにおいても言及し続けてきている。
しかしながら、その曲解が一人歩きしてしまい、今日の「お客様第一」といった環境になり、労働者が感情労働により精神的に過酷な状況に陥ったと指摘している。

第4章「職場内すら抑圧された感情が渦巻く場に」
最近では「顧客満足」のみならず「従業員満足(Employer Satisfaction・ES)」も求められるようになり、働く環境を改善することもまた求められている。特に新入社員に対して上司や先輩はどう対応していくのか、そのことについても気をつかう必要が出てきた。そのことに関するエピソードの他にも今となってはパワハラと呼ばれるような上司に対する部下における気づかいもまた指摘している。

第5章「過剰・感情労働時代のストレスとの付きあい方」
今となっては「ストレス社会」というほどである。そのストレスに対してどのようにして発散していくのかが大きな鍵となってくるのだが、その発散方法について著者なりの解消法も提示すると共にストレスをどのようにして付き合っていけば良いのかも取り上げている。

当ブログを書き始めた頃に多用したのだが21世紀は「心の世紀」である。もっとも心についての病が増えたことを意味したことで使ったことをよく覚えている。感情を無理に変えてでもお客様を立てることによって満足を生み出すと言われているのだが、そのことにより精神的な疾患を持つようになる人も増えてきている現状としてある。果たしてそれはいつまで続くのか、定かではない。

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