ガルシア=マルケス「東欧」を行く

本書の著者であるガルシア=マルケスはコロンビアの作家であり、4年前に逝去した。1982年にノーベル文学賞に輝き、なおかつ「百年の孤独」や「コレラの時代の愛」など多くの名作を生み出した。

そのマルケスは「記者」としての側面があった。戦後間もない1950年代には「エル・エスペクタドール」の新聞記者として活躍した時代があり、本書で紹介される紀行エッセイも1957年に東欧の「鉄のカーテン」を潜入して、その東欧の負の遺産を取材した90日間の記録である。

「鉄のカーテン」は「ベルリンの壁」と同じく東西冷戦の象徴として挙げられるのだが、米ソの緊張状態がヨーロッパとして西欧と東欧を分断してしまうような事象を表している。もっともその冷戦が分断されてからも西欧・東欧の表現はよく使われているのだが。

その「鉄のカーテン」の中でも東側にあたる東欧諸国を渡り、民衆たちの生活と他の新聞では語ることのできなかった冷戦の色が濃かった東欧の様相がまざまざと見て取れる一冊であった。