性愛空間の文化史

「性愛空間」というと色々とあるのだが、本書では元々著者が研究し続けてきた「ラブホテル」に焦点を当てている。なぜかというと著者が2008年に上梓した「ラブホテル進化論」が隆盛した事が挙げられる。

ただ私自身「ラブホテル」はもちろんいった事が無いし、元々の歴史も詳しくない。そのためラブホテルがいかにしてできたのか、そしてラブホテルの現在はどのような姿をしているのか、そのことについて、本書を通じて探る。

第一章「連れ込み旅館の成り立ち」
元々ラブホテルのルーツになったのは江戸時代における「出合茶屋(であいぢゃや)」や「船宿(ふなやど)」「待合(まちあい)」と言った所が上げられる。いずれも男女が密会のために使用した貸席で、そこでまぐわう姿もあったのだという。それから時代は変わり「円宿(えんじゅく)」が誕生した。その円宿に並行して誕生したのが本章で取り上げられる「連れ込み旅館」である。その言葉が使われたのは昭和初期の頃である。それから戦後になって「連れ込みホテル」ができる様になり、これが「ラブホテル」の原型となった。

第二章「モーテル(モテル)の誕生と衰退」
ラブホテルの原型としてもう一つあるのが「モーテル」である。元々アメリカで「motor」と「hotel」が合わさってつくられた言葉であり、自動車旅行や長距離ドライバーのためにつくられた簡易的な宿である。短時間で泊まれる宿と言うことであった。日本でもモーテルが観光地を中心に展開されている。

第三章「ラブホテルの隆盛」
日本ではモーテルや連れ込みホテルが広がりを見せた後、1973年に「目黒エンペラー」というホテルができあがった。これが現在あるラブホテルの第1号と呼ばれるホテルである。元々あった「連れ込みホテル」や「連れ込み旅館」の概念を覆すものだった。デザインもきらびやかなもので、総工費もかなりの額がかけられた。それからというもの、ラブホテルが続々と誕生し、隆盛を極めた。

第四章「ラブホの現在」
現在ラブホは都市部を中心に至る所に存在する。しかし週刊誌などで紹介されることは少ない。というのは「ラブホテル=セックス」という概念があり、取り上げるにも風当たりが強いというものがあるという。しかし最近ではラブホテルの形も変化しており、ホテル内の食事メニューが充実したり、居心地の良さを追求したり、あの手この手で生き残りを賭けて変化をしていると言える。

ラブホテルは現在も生き残っているところはあるのは知っていたが、ここまで変化をしながら残っていることは知らなかった。そういう意味では歴史も知る事ができただけでは無く、第四章にある「現在」は利用していない限りよく分からなかった。そのため本書を通じて私たちの知らないラブホテルの世界を知る事ができたのは大きな収穫と言える。