江戸の本づくし

江戸時代においても様々な本が生まれたのだが、そのほとんどは本書に出会うまでは知ることがなかった。もっというと本書でも収録しきれなかった本がまだまだあるのかもしれない。毎日200冊ほどの本が世に出てくる出版状況を考えると、程度こそはあれど、今も昔も同じような出版の傾向にあるのかもしれない。

話はさておき、江戸時代はどのような本が出てきたのか、その内容を1782年に刊行された「御存商売物(ごぞんじのしょうばいもの)」といわれる黄表紙をもとに取り上げている。

第一章「上巻」
もっとも本書で取り上げている「御存商売物」は当時の時代における様相を痛快に描いている。いわゆる「風刺」の様相を見せている。当時は本やといったものはあった物のほかに、かつてはお金を支払って本を貸すといった「貸本屋」も存在している。私の記憶では大東亜戦争後間もないときにマンガか貸本となっていたことがあり、現在もTSUTAYAなどのレンタルショップにおいてマンガなどを有料で貸し出しているところもある。また本章ではこの黄表紙にある文化のほかに遊郭のことについても取り上げている。

第二章「中巻」
第一章でも遊郭が取り上げているのだが、あくまで一部である。本章ではその遊郭を中心に取り上げるだけでなく、茶屋といった男女の場が中心となっている。もちろん今となってはR-18指定になるような要素も取り上げられている。

第三章「下巻」
ここでは過去に刊行され、なおかつ名著となっている古典作品などを取り上げているほかに、江戸のスポットなどが紹介されている。特に古典作品については源氏物語・枕草子・徒然草など、今も読まれている書物もふんだんに紹介されている。

本書で取り上げている「御存商売物」は江戸時代における日常が映し出されているのだが、その日常を見ると江戸時代における当時の文化・世間がどうなっているのかがよくわかる。しかも絵もふんだんにあるため、どのような状況かも一目でわかるため、江戸時代を知るための格好の一冊であったと言える。