入れ子の水は月に轢かれ

沖縄の中心地である那覇市、その中に水上店舗通りが本書の舞台である。どこにあるのかというと那覇市牧志と世ばっる地域で、そこに流れる川として「ガープ川」があるのだが、そのほとりに店舗が軒を連ねていることからそう名付けられたのかもしれない。

その通りの裏はまさに「スラム」と呼ばれる地域であり、そこで生きる人びとは普通の人ではとても想像できないような境遇に生きる方々を描いている。しかしそこでとある水死体が発見したことから物語は始まる。しかもその事件の背景には、沖縄でも問題となった米軍を始め、アメリカのCIA、さらには琉球のルーツなどが入り交じり、物語は大きく展開することとなった。事件の緊迫感はもちろんのこと、沖縄の「闇」と思えるような側面が映し出された一冊と言える。