底辺への競争 格差放置社会ニッポンの末路

景気は踊り場になっているような感じであるのだが、その一方で「下流」や「格差」といった風潮が止まらない。その止まらない中で最近ではパラサイト・シングルなどが中年化になり、なおかつ格差が子ども・大人関わらずに起こっている現実もある。その現実はいったいどのようなものなのか、そしてそれに関する解決策はあるのか、本書はそのことについて論じている。

第1章「下流化する中年パラサイト・シングル」
実家にパラサイト(寄生)するように暮らす人を差すのだが、この頃そういった人が中年かし始めてきているという。高齢の両親が困ったり、戸惑うようなことをニュースで目にするのだが、もっともなりたくて「パラサイト」になった人もいる。経済的にあるいは仕事的に失ってしまった、いわゆる非正規がなくなり、あるいは失業した人がそうなってしまうと言う現状もある。

第2章「パラサイト・シングルが発見された時代」
元々「パラサイト・シングル」という言葉が出てき始めた頃はバブル崩壊があり、「失われた10年」ないし「失われた20年」と呼ばれた時代であった。その中で雇用状況が悪くなり、就職できずに実家暮らしで職を求めて彷徨うといったことがあることで生まれたという。

第3章「多様化とリスク化にさらされる若者」
かつては学校を卒業してから集団就職を行い、そこで還暦を迎えるまで働き、還暦で定年退職をしてから悠々自適な生活を送り、生涯を終えるといったことが一般的にあった。しかしながら働く、あるいは生きるスタイルの多様化に伴い、未婚になる人も増え、なおかつ生き方も多様化するようになっていく。その多様化によってリスクが増えていき、それにさらされる若者が増えているという。

第4章「「格差」にさらされた最初の世代」
その「格差」にさらされる世代の最初と言われるのが「団塊ジュニア」と呼ばれる世代であり、年齢で言うと40歳過ぎにあたる。この年代はいわゆる「ロストジェネレーション(ロスジェネ)」と呼ばれるに近しい世代であり、就職氷河期と呼ばれる中で就職戦争に敗れ仕事をまともにもらえなかった時代であり、そこで「格差」が生まれたと著者は指摘している。

第5章「高止まりする非正規化・未婚化」
仕事にしても非正規化が進み、高止まりの一途を辿っている。他にも未婚も右肩上がりが続いており、高止まりになるのではと分析している。もっともその高止まりの理由には経済的な要因が強くある。

第6章「日本以外でも増えるパラサイト・シングル」
「格差」を議論するとしばしば耳にするのは「海外から比べたら日本はまだまし」という言葉である。もっとも僧なのかもしれないのだが、格差を表す「ジニ係数」は諸外国と比べても低い傾向にあるようだが、この頃近づいてきているといった声もある。

第7章「「底辺への競争」の末路」
もっとも底辺への競争は進んでいる一方で、その末路はどこにあるのかということを分析し、なおかつ制度的、さらには一人一人のミクロの観点からどのように生きていけば良いのかという活路を見出している。

格差はだんだんと広がっているのは事実であるのだが、もっとも資本主義である以上、また「人間」として生きている以上「格差」はつきものである。とはいえ、その「格差」の度合いが受け入れられるかどうかによって、それを問題視するか否かが変わってくる。その格差に対して、生きるためにどうしたら良いのか、そのことを考えるきっかけになる一冊である。

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