午前三時のサヨナラ・ゲーム

人間関係の在り方はある種「万華鏡」のように移ろう。しかしその移ろいのなかでミステリーになるような要素もあれば、コメディになるような要素もある。その万華鏡のような人間模様を連作として取り上げている短編集が本書である。

もっともその連作は、タイトルからして「野球」に見立てている。なかでも「10.8」や「10.19」など昭和・平成の野球史の中に残る試合も引き合いに出しているところもあれば、作中の物語にも「野球」を引き合いに出していることが所々見られ、野球ファンであればたまらない場面も多々見られる。

そう考えると人間模様が事細かに描かれていると思いきや、そこに「野球」もプラスされて描かれている物語である。これは小説ファンと野球ファン、その両方に向けた短編集であり、両方のファンであれば一粒で二度美味しい一冊と言える。