「あやかし(妖)」の話というと怖さがあるのだが、ここ最近読むあやかしの話はなぜか心温まる作品が多くある。もっとも手に取っているの私なので、それを好いている傾向なのかもしれない。同じ著者で数年前に「恋する狐」を取り上げたのもそのせいかもしれない。
それはさておき、本書は「恋する狐」と同じく江戸時代におけるあやかしの話である。舞台は浅草川と呼ばれるところであり、その川辺にある船宿で女将として切り盛りしている女性を取り上げている。面倒見のよいイメージが持たれてしまい、人と言うよりもあやかしたちにも人気であり、人と人ならざる世界との架け橋のところで仲介しているイメージを持ってしまう。
そのイメージを持ちながらも、とある事情をかかえるあやかしたちに世話を焼いてしまうという女将ならではの性格もまた物語のハートフルさを引き立たせている。
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