本書の著者の名前を見てピンと思い浮かんだ人もいるかもしれない。もっとも本書の帯にも書いてあるのだが、今からちょうど20年前の2000年にノーベル化学賞を受賞した方である。その白川氏が自身、そして研究者としての人生を振り返りながら、科学の愉しさをエッセイとして綴った一冊が本書である。
1.「自然に学ぶ」
長らく科学的に研究を続けていった中で新たな発見を見出すことができるようになる。と同時に科学における「恐ろしさ」「危険さ」も見出した。本章では挿絵も挟みながら、研究を通して「自然に学ぶ」ことができた体験談を綴っている。ちなみに本書は「信濃毎日新聞」にて掲載されたコラムを再録している。
2.「日本語で科学を学び、考え、そして創造できる幸せ―先人の努力を糧に―」
日本語でもって科学を学び、その学びでもって、研究を進め、新しい発見を見出し、ノーベル賞を受賞した方も数多く輩出した背景について海外の特派員から受けた質問に答えるという章である。
もともと日本において科学が取り入れはじめたのは江戸時代、オランダから「蘭学」として取り入れられたことから始まり、それが西洋における科学から一線を画し、日本独自の科学として醸成していったとされている。
3.「高分子合成を志して」
著者自身が2018年10月に京都大学において行った講演を文章化している。著者自身の人生から、著者の専門である高分子学に触れた経緯、ノーベル化学賞を受賞してのエピソードなど余すところなく取り上げている。
著者の人生、そして研究社として、ノーベル化学賞を受賞して、さらにこれからの科学はどうなっていくのか、それらのこと全てが詰まった一冊であり、これから科学者を目指したい方々への羅針盤となる一冊とも言える。
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