怪獣生物学入門

何とも奇妙な生物学である。

元々怪獣というと、ゴジラやガメラなど創作の中で生まれた存在であり、空想の生き物である。しかしながら著者はそれを生物学的に考察を行うことを試みたという。もっとも身体的な特徴は実物を見たり、時には解剖したり、と言ったことがあるのだが、ただ一つ思いつくものとして「「進撃の巨人」と解剖学 その筋肉はいかに描かれたか」で書評を行った時に巨人たちの筋肉を解剖するというものがあったが、こちらは「美術解剖学」と呼ばれる新たな学問によってもたらされた。

本書は登場人物による台詞などを手がかりにしながら怪獣を生物学的に紐解いている。

第一章「恐竜と怪獣の狭間」
ゴジラが生まれたのは1954年の特撮映画からである。それから66年の月日が流れたのだが、いくつものゴジラ作品が生み出され、アメリカ発の「GODZILLA」も存在するほどである。そもそもゴジラはどのような分類に入るのか、恐竜の系統をもとに取り上げている。

第二章「日本怪獣学各論」
怪獣学というと高尚な学問のように見えるが決してそんなことはない。怪獣とはどのような存在なのか、身体的な特徴なども含めて考察を行う学問である。怪獣は通常兵器では聞かないところ、怪獣によっては攻撃されても修復するなどといった謎から、何処から生まれ、どのように育ち、すみかはどこにあるのかまで考察を行う。

第三章「進化形態学的怪獣学概論 ―脊椎動物型怪獣の可能性―」
本章では2016年に公開された「シン・ゴジラ」をもとにして、ゴジラの身体的特徴について取り上げている。シン・ゴジラにはそういった身体的特徴を示す台詞がいくつか存在しており、進化の過程でなぜゴジラが生まれたのかという考えの材料にもなる。

第四章「進化形態学的怪獣論 ―不定形モンスターの生物学的考察―」
「マタンゴ」というとドラゴンクエストシリーズのゲームをプレイした方は分かると思うが、キノコ系のモンスターとして有名である。そのもととなったのは1963年に初めて上映された映画のタイトルであり、キノコのモンスターが発祥である。ドラゴンクエストに出てくるモンスターとは違い、食したい誘惑を蒔き、蒔かれた人間が食する、あるいは胞子を浴びると自我を失い、キノコになってしまうと言うものである。キノコのモンスターであるため、本章では「不定形モンスター」という扱いになっているのだが、そのマタンゴのメカニズムについて追っている。

第五章「ウルトラ怪獣形態学 ―比較形態学と進化的考察―」
ウルトラマンにて出てくる怪獣は様々であり、その怪獣についてのメカニズムと進化の過程について取り上げている。多岐にわたっているため、本章では一部かいつまんでいる。

怪獣はSF上のものでありつつも、本書では生物学的なものから台詞や怪物のメカニズムを追いながら、どのような進化を辿っていったのかを取り上げている。ある種の空想科学かもしれないのだが、空想であっても、生物学的に切り込んでいくと怪獣を見るのも面白くなる。

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