日本を始め多くの国で採用されている経済システムである。もちろん「資本主義」とひとえに言っても、細部を鑑みるといくつか存在するのだが、本書では広義の意味での「資本主義」を指しているのだが、そもそもの「資本主義」はいくつもの岐路に立たされることがあった。最近のコロナショックもあれば、一昔前のリーマン・ショックでも同じように資本主義のあり方が問われるようになる。現にリーマン・ショックの時は資本主義を批判したり、崩壊するといった論調の本が続々と出版されたことを覚えている。
そもそも資本主義は今の情勢と共に変わる。その変わることはどのようなことなのか、著名な経済学者の方々のインタビューをもとに取り上げている。
Chapter1「ポール・クルーグマン 我々は大きな分岐点の前に立っている」
2008年にノーベル経済学賞を受賞し、なおかつリーマン・ショックの前のサブプライム住宅ローン危機を指摘した学者は日本についても度々言及しており、なおかつ日本の経済政策についても提言を行っている。グルーグマンは日本経済のリスクとメリットもあれば、そもそもの資本主義の変化について取り上げている。
Chapter2「トーマス・フリードマン 「雇用の完新世」が終わり「人新世」がはじまる」
アメリカのジャーナリストでニューヨークタイムズ紙における掲載の常連と呼ばれるトーマス・フリードマンは雇用についてAIなどのテクノロジーの発展により、雇用の在り方が変わり、なおかつ人との在り方が変わるのだという。
Chapter3「デヴィッド・グレーバー 職業の半分がなくなり、「どうでもいい仕事」が急増する」
アメリカの人類学者でポストモダンの議論の的になることがある。AIなどの技術革新により、仕事はどうなるのかの議論はChapter1や2でも言及しているのだが、グレーバーは重要な仕事がなくなり、どうでもいい仕事が増えると言ったものである。
Chapter4「トーマス・セドラチェク 声調を追い求める経済学が世界を破壊する」
マクロ経済学者であるトーマス・セドラチェクは世界そのものが資本主義ではなく「共産主義」になるのだという。また反経済成長論者であるため、日本における経済成長主義についても批判をしている。
Chapter5「タイラー・コーエン テクノロジーは働く人の格差をますます広げていく」
経済学者でニューヨーク・タイムズにて経済コラムの連載を常に行われているタイラー・コーエンはテクノロジーの進化と格差の増長の関連性を指摘している。
Chapter6「ルトガー・ブレグマン ベーシックインカムと1日3時間労働が社会を救う」
Chapter5まではアメリカの学者だったが、ここではオランダであり、しかも非経済学者である。ブレグマンはジャーナリストであり、歴史家である。資本主義は経済学の範疇にあるため、門外漢の印象が強くあるのだが、そのブレグマンがベーシックインカムにおける言及を行っている。
Chapter7「ビクター・マイヤー=ショーンベルガー 「データ資本主義」が激変させる未来」
ビッグデータにおける資本主義研究の第一人者であるビクター・マイヤー=ショーンベルガーはビッグデータと資本主義における影響を論じている。
資本主義は進化をする。その進化はいつまで経っても未完ではあるものの、完成に近づくように歩を進み続けていく。その進む方向が正しいのか、誤っているのか、それは定かでない。
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