京都異界紀行

歴史的な場所として知られる京都、かつては首都機能があり、なおかつ皇居も京都にあった。歴史のなかでは長らく日本の中心地となっていた京の都、通称京都は、実を言うと「異界」と呼ばれる場所であるのだという。その「異界」と呼ばれている所以とスポットについて取り上げたのが本書である。

第一章「大社の表の顔と摂社・末社が抱える裏の顔」
「大社」と言うと簡単に言えば神社のことを表している。本書は数ある神社を取り上げているのだが、そこに祀られている神や御霊は縁起が良いものである一方で、怨霊を祀られているスポットもあるのだという。

第二章「空也上人と松尾大明神」
「空也」とは元々仁明天皇の第七皇子である常康親王の子どもとして生まれたと言われているのだが、出生については史料がほとんど残っておらず、定かではない。後に出家し「空也」と名乗り、修行僧として多くの地域を渡り、社会事業などにも力を入れて多くの消え者を得たことでも知られている。その功績もあり、空也上人像が六波羅蜜寺をはじめいくつかの寺院で保存されており、中には重要文化財にまでなった。

第三章「神となるための残酷と異形」
孤立無援のまま死を迎え、墓地すら建てられることなく無縁仏で供養される人もすくなくない。その無縁仏は全国的にも点在しているのだが、京都でも宝福寺と呼ばれる場所があり、そこには南無地蔵がある。そこでは無縁仏として死者の供養が行われている。

第四章「えびす・イナリ・ハチマンとキツネ」
京都は歴史的な年であるために寺院が数多くある。中にはえびすが祀られる寺、あるいはキツネを祀る稲荷神社、さらには八幡宮なども点在しており、それぞれの寺院にはルーツもあれば、祟り神のような怖いエピソードも存在する。

第五章「日吉山王とヒメ神」
ささやかに建てられている神社であるのだが、全国的に有名な白山神社。歯痛治癒の御利益をもたらしてくれるのだが、そもそもなぜ歯痛治療の神が祀られているのか、また本章には日吉神社と八坂神社のルーツも取り上げている。

第六章「大魔王・崇徳天皇の彷徨」
栗田神社末社には崇徳天皇が祀られている。栗田神社では守り神として祀られているのだが、この崇徳天皇は保元の乱において罪人として扱われ讃岐国(現在の香川県)に配流(いわゆる「流刑」)された。その配流に伴い京では安元の大火をはじめとした出来事が立て続けに起こったことにより「崇徳天皇の怨霊伝説」が浮上し、いつしか「大魔王」と呼ばれるようになった。

第七章「菊渓川が誘う」
高台寺山から流れる川に「菊渓川(きくたにがわ)」と呼ばれる川がある。京都市東山区にあり、同じ東山区には「六道珍皇寺(ろくどうちんのうじ)」と呼ばれる寺院がある。この珍皇寺には「六道」と呼ばれる日本における地獄への道案内の寺としても存在しているという。

第八章「開成皇子「胞衣伝承」と光孝天皇「盲人伝承」」
本章では寺院における伝承と皇子・天皇について取り上げているのだが、代表格として「胞衣伝承」と「盲人伝承」がある。とくに盲人伝承は、盲人の言い伝えや恐怖をもとにして取り上げられている。

第九章「「うつぼ舟」と「流され神」」
人も今ではそれ程ではないのだが、「流刑」や「島流し」といった辺鄙な島へと渡るといった刑罰があった。本章ではその神の場合にある「流され神」の信仰などを取り上げている。

京都には伝承が多く存在するのだが、その伝承の中には、「霊異」や「怪異」と呼ばれるような怖いエピソードもたくさんある。その伝承の話を聴くと、今日とは霊との媒介とする世界にいるのではないかと邪推してしまう。