前夜

山奥や僻地と行った所の場合は古い慣習が残っている所が多くある。その「慣習」自体が、外から見れば、ある種非現実的、あるいはファンタジーといった要素が絡んでおり、本書は、慣習をもとにした「ファンタジー」がある。

ちなみに本書は「ミステリー」でありながら「ファンタジー」の要素が色濃くある。山奥の集落にある別荘が舞台となっているが、そこにはある「吸血鬼」の伝説があるという。

殺人事件が起こるのだが、吸血鬼だと信じ込まれ、なかなか解決までに至ることができないもどかしさがあるが、事件は事件として解決への道を歩みながらも、兄弟が育ってきた郷里の集落の真相を追っていく姿と、恋愛への軌跡と本当の意味で「色々」と要素が入り交じった一冊と言える。

純粋にミステリーを愉しみたい、あるいはファンタジーを楽しみたいのであればある意味適さない一冊である。むしろ本書そのものについてジャンルを超えて純粋に愉しみたいとする人に適する一冊と言える。