盆踊りの戦後史 ――「ふるさと」の喪失と創造

盆踊りというと夏の風物詩であるため、季節はまだ先であるのだが、もっと言うと新型コロナウイルスの感染拡大によって盆踊りのイベント自体の開催が難しくなった。そもそも盆踊りとはいつどのように生まれ、栄えていったのかという疑問がある。本書は盆踊りそのもの歴史について取り上げている。

第一章「日本の近代化を盆踊り―明治~昭和初期」

盆踊りそのものの歴史は諸説あるのだが、一遍上人が各地に踊り念仏を布教したことが始まりとされている。鎌倉時代の中期であり、当初は宗教の一種であった。それが風流の踊りとなり、地域それぞれで違う盆踊りが栄えるようになった。実は盆踊り自体禁止になるような時期があった。明治に入ってのことであり、当時は裸踊りだったという。

第二章「戦後復興と盆踊りの再生―昭和20~30年代」

時代は変わり、昭和に入ると、大東亜戦争などの戦争に巻き込まれ、さらに敗戦を喫するようになり、荒んだ世の中となったが、荒んだ心を回復するための試みがあった。その一つに盆踊りの再生があった。

第三章「高度経済成長期の新たな盆踊り空間―昭和30~40年代」

高度経済成長になると、首都圏への一極集中に拍車をかけるのだが、故郷のための盆踊りもまた栄えるようになった。都道府県はもちろんのこと、市区町村やさあらに地域ごとの盆踊りも生まれてくるようになった。

第四章「団塊ジュニアと盆踊り―昭和50年代」

団塊ジュニア世代となると、郊外にニュータウンが生まれるようになった。もちろんそこで「地域」といった概念が生まれるようになり、なおかつ新しい盆踊りも生まれるようになった。

第五章「バブル最盛期の盆踊りと衰退―昭和60年代~平成初期」

盆踊りのあり方も変わるようになった。特に北海道では「YOSAKOIソーラン祭り」が生まれるようになり、一種のイベントにまでなった。とはいえど、盆踊りはバブル崩壊と共に衰退の一途を辿っていった。

第六章「東日本大震災以降の盆踊り文化―平成後期~現在」

第三章にて盆踊りと故郷といった連想があったのだが、その連想自体が東日本大震災によって再考されるようになった。また新型コロナウイルスの感染拡大により盆踊りそのもののイベントが難しくなったものの「オンライン盆踊り」といった新しい試みも行われるようになり、媒体は変われど、伝統は途切れさせない試みもある。

盆踊りは単なる地域の踊りではない。「故郷」を連想させる踊りである。盆踊りの「盆」は地域によるが毎年7月ないし8月にある「お盆」と同じように故郷に帰り、祖先の霊を祀る行事がある。だからでこそ故郷を連想せずにいられないのが「盆踊り」とも言える。

コメント

タイトルとURLをコピーしました