オッサンの壁

1972年に「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(通称:男女雇用機会均等法)」が制定された。今年でちょうど50年の節目を迎える。その50年間、女性の社会進出もだんだんと行われていった。その一方で、先日のとある牛丼店における元常務の舌禍もあれば、さらにダイバーシティに反する動きを見せるなど、根底の部分ではまだ平等に反している動き・発言が未だに残っている。

男女平等というと本書で取り上げる「記者」の世界はどうか。女性の記者が活躍する事が多いのだが、記者の中でも「政治部」や永田町の記者の世界では男社会だったと本書の著者は主張する。著者が所属する毎日新聞、もとい全国紙初の女性政治部長をつとめた著者は永田町の記者の経験と永田町記者の社会とはどのような場だったのかを綴っている。

第一章「立ちはだかるオッサン」

本書は著者が政治部として経験した1980年代~2010年代の経験を取り上げ得ているが、特に第一章~第二章は主に1980年代~2000年代、それも新人から若手記者時代の経験談と政治取材の現場を取り上げている。

その当時は、男女平等が言われ始めた時代である一方で、政治取材の舞台は男の現場だった。しかし著者が初めて政治部に異動したときには女性の政治部記者が増え始めていたときであったという。しかし男女関係なく取材を行っていきたかったにもかかわらず、それを意識させるような発言を受けるなど、一言で言えば「オッサン」の伏魔殿だったことを指摘している。

第二章「ハラスメントの現場」

それを象徴すべき所として、本章では議員の中にはハラスメントな発言をしてくることを告発している。しかも永田町に限らず、地方の現場でもそれに似たようなことがあったのだという。

第三章「「女性初」が嫌だった」

著者が政治部部長になったのは2017年のことである。冒頭でも述べたとおり全国紙初の快挙だったのだが、著者はそれが嫌だったという。なぜ嫌だったのか、その理由と政治部部長としての活動と当時の政局とともに述べている。

第四章「女性議員の壁」

記者の現場の中の経験としてこれまでは「オッサン vs. 女」といった構図が多かったのだが、最近になって「女 vs.女」の構図もできた。それは議員同士での対立もある。その背景を見て著者はどう思ったのかを綴っている。

第五章「壁を壊すには」

女性の社会進出は進んではいるものの、諸外国と比べてもまだ足りないといった印象も強い。それを阻害しているのが本書のタイトルにある「オッサン」の壁である。その壁を壊すにはどうしたら良いかを著者自身の経験を通して提言している。

女性ならではの視点と言うよりも、「女性の政治部記者」の視点でどのような取材があり、出来事があり、有名議員の意外な一面やエピソードがあった。それと同時に、政治部の経験から女性記者における環境の問題点も洗い出している。「男女平等」はまだまだ発展途上であると同時に「生きづらさ」を露呈している。本書は女性の立場からであるが、そう思わずにはいられなかった。

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