逆臣 青木幹雄

「参院のドン」青木幹雄

昨年の参院選で初めてその名を知った人も多いことだろう。青木氏は自民党の中でも最も影響力があり、とりわけ参議院では絶大な影響力を及ぼしている。また道路族の中でも首領的な役割をしており、小泉政権下、及び安倍政権下における道路特定財源の見直しを徹底的な骨抜きを行ったといわれている。

ではなぜ青木幹雄はこのような権力者になったのだろうか。青木幹雄は今は亡き元首相竹下登の秘書を務め後に参議院議員となった。そこから権力者への道が始まった。それが強固なものとなったのは1998年小渕内閣が誕生した時に参議院幹事長になった時のことである。さらには2000年、師でもある竹下が病床についてからその権力は膨大に膨れ上がり小渕首相が倒れてからは首相臨時代理となった。

そのあとの森政権への選出までの過程は青木がコントロールしていたが真相の程は不明である。そして2004年には参議院議員会長となり「参議院のドン」として名を馳せた。しかし2007年参議院通常選挙において自民党が惨敗したことにより参議院議員会長の職を辞任し、尾辻秀久に譲った。それでも「参議院のドン」としての権力は依然強いままであり、与野党ともに影響力のある議員の一人である。

さて本書は青木幹雄の知られざる姿を告発している。自民党は今はそれほどではないものの派閥闘争というのは絶えない。とはいえ選挙や総裁選の時には結束するというのはよくある話である。しかしそれだけではなく派閥を超えフィクサーとして圧力をかけている一人なのがこの青木幹雄であると著者は語っている。本書での最も重い罪状としては、師である竹下登への裏切りだろうか。

本書の第3章でも述べられているが竹下登への裏切りをあらわにしたのは2000年の竹下登の死である。その中で青木は大口をたたき、さらには竹下登への侮蔑を露骨に表したことにより竹下家から非難を浴びたというエピソードである。森喜朗や小渕恵三ではとても考えられないようなことを青木は平然とやってしまう。狡猾な性格が如実に表れた1面であった。

本書で青木幹雄の本性について分かったが、それに追随する政治家の実情についてもっと知りたい。著者の次作に期待したい。