芸術とスキャンダルの間

2006年5月に芸術選奨を受賞した和田義彦の作品が、イタリアの画家アルベルト・スギの作品と酷似したことによって芸術選奨をはく奪されたという盗作事件がメディアで話題となった。それに限らず戦後では多くの美術にかかわる事件が相次いでいる。本書はその中から代表的な14の事件を取り上げられている。

私が注目するのは最後のパロディ作品と著作権に関してのことである。そもそも著作権は音楽や動画でさんざん批判していた。最近ではこの著作権を過激に主張している輩が多いことから、著作権の在り方について様々な文献に向き合う機会が増えている。さて本書では昭和46年に起こった「白川・アマノ裁判」でのことについて書かれている。

一昨年に起こった盗用事件とよく似ているものだが訴訟になったといったらこちらを挙げるべきだろう。この訴訟は結果から言うと1審では著作侵害にあたり、2審では一転著作権侵害に当たらないとされ、最高裁では1審の判決を支持する判決となり破棄差し戻し、結局差し戻し審で著作権侵害と認められ確定した。

この裁判ではパロディ作品が著作権に引っかかるのか、どこまでパロディであれば著作権に引っかかるのかという線引きについて問われるものとなった。事実芸術作品でも酷似しているものが多いが本質的に違うというものも少なくない。しかし、これは盗用と主張して裁判沙汰になり、はたまたは著作権違反により差し止められたりすることもある。

では著作権とは本当は誰のダメのものかということに帰依してくる。著作権ほどあいまいな法律はあまり見当たらず、これから活発な論議によって、しっかりとしたガイドラインを、かつ権利者側・被権利者側双方に立った法制でないと著作権というのは成り立たないと私は思う。

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