星のひと

全てはある不幸(?)から始まった。主人公の同級生の家に隕石が落ちてきたことから始まった。

隕石が落ちることはほぼゼロに近く、「ラッキーだったね」とか「大金持ちだね」と嫉妬の目を向けられる同級生の草太がいる。常に特別な存在でいたい主人公と、隕石によって特別な存在になってしまった草太との両者とその周りの人たちの物語が本書であるが、どう見ても草太が主人公のようにしか思えなかった。

両者はまだ思春期を迎え出した中学生であるが、隕石のせいだろうか、特に草太は葛藤と言うのが強烈だったように思える。大人たちの身勝手な「都合」ばかりがまかりおってしまい、自分はどんな存在なのかと悩むのだが、それを隠しながらもけなげに生きているような描写がそこにはあった。

草太と主人公ばかりではない。草太の父親、草一郎もまた草太に近い、いやそれ以上のものが映し出されていた。家族がいながらも感じている孤独感がありありと見えた。
しかし草一郎はもともと近所の友達で初恋の人であったビビアンと再会し、そこから人間の絆というのを見出す。

フィクションのようであって、何か今の世の中を映し出しているような気がしてならない。元々日本では「地域」という枠でもって、親がいなくても子は育つようなコミュニティが存在していた。ところが「地域」のコミュニティが薄れ、プライバシーやセキュリティという言葉が罷り通った時、私たちは誰かと一緒にいながらも孤独感と言う感情に苛まれる。ひょんなこと、もしくはめったにできないことに遭遇したとしても羨望と嘲笑が周りから聞かれるようになり、自分自身が負の感情に陥ってしまう。今の社会の現状、そして日本のあるべき姿というものを「隕石が落ちてきた」というストーリーから紡ぎだしている。本書を読んでそう思った。

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