人口減少時代の自治体経営改革―日本のあしたのつくり方

北海道夕張市が財政破綻をして、もう8年の月日が流れる。現在もなお再建に向けて動いているのだが、まだまだ完全に立て直るまでに時間がかかる。

夕張のような財政破綻のある所の他にも、財政危機状態にある状態にある都道府県・市町村などの地方自治体がある一方で、本書のタイトルのように、経営するように自治体を運営し、財政再建を果たした所も少なくなく、かつ斬新な改革などを行う所もある。その上で本書は2008年に始まった「人口減少時代」の中で、自治体における「経営」のあり方について提示している。

第1章「人口減少時代の中で「小さな自治」をどう実践するか?」
人口の増減を見てみると日本全体では最初に書いたとおり、2008年以降減少傾向にあるのだが、首都圏・ヘッドタウンと地方に限って言うと、前者は増加傾向になっている所が多く、後者は急速に減少しており、中には過疎区域に指定されている所もある。どこもそうであるが、人口の変化により地方の収入、いわゆる「歳入」も変化しており、減少した地域も多々ある。そのような状況の中だと「歳出(コスト)カット」に乗り出す傾向にあるのだが、そのコストカットも、企業の経営と同じくして「変動費」「固定費」と分けて考える必要がある。他にも自治体である事から中長期だけでは無く、30年~50年単位の「超長期的」な予算シミュレーションを立てる事の必要性についても本章にて語られている。

第2章「「財務マネジメント」という業務が見落とされている」
日本の中小企業ではなかなか浸透していないものの、大企業では「CFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)」が存在する。もちろん企業の経理・財務・税務を統括する立場にあるのだが、自治体でもそれに近い存在はあるのだが、明確に「財務マネジメント」を行っていたのかというと、必ずしもやっていたとは言えなかった。2008年に橋下徹氏が大阪府知事になり財政非常事態宣言を出したときの大阪府は「財務」という発想すら存在しないほど腐敗していたことにある。もう一つ石原慎太郎氏が東京都知事に就任する前までも同じことが言えた。財政的に逼迫している地方が多い中で今後、緊縮も含めた厳しい財政で臨んでいく必要がある。それに際し著者は自治体のCFOを作る事を提示している。

第3章「公営企業というアセットの生かし方」
自治体はインフラであると同時に会社である。ただ、収入財源は地方市民・県民の税金によってまかなわれている事から「公営企業」とも言える。企業であるのでハコモノ、あるいはインフラ整備などの「公共事業」はもちろんのこと地方債などの「財政融資」と言ったところの収支バランスの重要性を指摘している。

第4章「信用保証制度の点検のすすめ」
あまり聞き慣れないのだが、「信用保証制度」とは、

「経営力が低い企業がおカネを借りやすくするために、自治体が支援するもの。」(p.192より)

とある。つまり民間企業のために自治体が親近を融資するのだが、その運営によってバランスシートを肥大化させている要因になっているのだという。それを点検して、適切に運営できているのかどうか、定期的にチェックする必要があるという。ちなみにモデルケースとして著者が特別参与として担当した大阪府・大阪市を取り上げている。

第5章「人口減少がもたらす自治体の多様性」
人口や事情によって、市町村の考え方・都市開発を買えていく必要がある。それについていけないと財政的にも徐々に逼迫化するだけでは無く、地方の魅力も失われてしまう。そのため、人口減少をどのように解釈し、多様性を認め、変化していくのか、それは自治体それぞれの課題としてあげられる。

国もそうだが、地方自治体も常々変化が求められるのだが、財政的にも厳しい状態になっている、そして人口減少の時代が到来したからでこそ、地方自治体ならではの改革が必要不可欠である。もちろん本書で主張しているように財政改革も必要であり、人口構造の変化による都市計画についても必要になってくる。優先順位は地方自治体によって異なるものの、活性化し続けることは常々変化を考え、実行していくことが重要になる。そのことを本書で主張している。